物事には必ずコインのように表と裏がある。それはビジネスも然り。詐欺や裏取引、あるいは法の網を巧妙にかいくぐったグレー商法……。もちろん、それらは断罪されてしかるべきだが、そんな「裏」から若きビジネスパーソンが学ぶことは多い。人々が何を欲し、社会には何が足りないのか。つまり、日本経済の「裏」を知ることができるからだ。
火曜日の時事日想は、テレビ、全国紙、週刊誌といういわゆるニュースの現場を経験してきただけではなく、実話誌などで裏ビジネスなどの取材を続けてきた筆者が、巷にあふれる事象を「裏」から読み解いていく。
野田首相が消費税を上げようと四苦八苦している。「日本は借金大国で、赤ん坊はおぎゃあと生まれた瞬間に800万の借金を背負わせられる。だから、私が憎まれ役になって消費税を上げますよ」というのが財務官僚からレクチャーを受けた首相のロジックだが、これには1つ大事な視点が抜けている。
それは「踏み倒す人」の増加だ。
2010年度の国民年金保険料未納率は40.7%と過去最高となった。国税・地方税・国民健康保険料の滞納は総額で5兆5000億円越え。何と1年間の消費税2%分もの滞納があるのだ。
さらに、税金を納めなくてもいい生活保護受給者も過去最高の209万人を突破している。増税をすれば、公共料金を「もう払えません」とギブアップする人が急増するのは目に見えている。つまり、不退転の決意で増税したところで、踏み倒しが横行すれば何も変わらないというわけだ。
その前兆はすでに表れている。最近、生活が苦しい人ではなく、定期収入もあって余裕もあるのに「貧者」を装って、給食費、子どもの保育料や授業料、病院の治療費などを踏み倒すケースが急増しているのだ。
「消費税が上がるし、年金も破たんするって話だし、そんなもんバカバカしくて払ってらんねーよ」という理屈である。
そんな人々に取材した結果を、4月9日発売の『週刊ポスト』に提供させてもらっている。興味のある方は詳しく読んでいただきたいのだが、そこで思ったのは、なぜここまで「踏み倒す人」が増えてきたのかということだ。
モラルがどうとか、景気が悪いとかいう以前に、ここまで正々堂々と踏み倒す人が増えたきっかけは何なのか。
●「払い過ぎたものは返してもらうのが当たり前」
記事のなかでも触れているが、給食費の不払いが増えている自治体の担当者によると、給食袋で子どもたちに持ってこさせたころ、不払いはほとんどなかったが、2004年に口座振替に切り替えたところ急増したというのだ。
給食費を滞納している、なんてことが周囲にバレたら子どもがいじめられるし、親としてもカッコ悪い。顔の見えない事務手続きによって世間体を気にする必要がなくなった時、踏み倒す人が急増する、というのは非常に興味深い。
実は近年、この構図を象徴する社会現象が起きている。満員電車に揺られて通勤をしているサラリーマンならば、こんな中吊り広告をよく見かけないだろうか。
「その借金、利息を払い過ぎていませんか」
弁護士事務所や司法書士事務所の「過払い返還請求」の広告である。「過払い」についての詳しい説明は避けるが、分かりやすく言うと、消費者金融の利息が高過ぎると最高裁が認定したことを受けて、弁護士や司法書士が「払い過ぎた利息」を取り戻してくれたり、借金をチャラにしてくれたりするもので、いわば「合法的な踏み倒し」である。
弁護士・司法書士にとっては簡単な事務手続きで多額の報酬を得ることができるため、まさにカネの成る木ということで、テレビ、夕刊紙、ネットといたるところで「客」に呼びかけ、その勢いは「過払いバブル」と揶揄(やゆ)されるほどだった。
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http://news.livedoor.com/article/detail/6453262/
─情報元:Business Media 誠サイト様─