驚異的な成長がついにストップした。
ソーシャルゲーム大手のグリーは2月12日、2013年6月期第2四半期決算(12年7~12月期)と同時に通期見通しの下方修正を発表した。
第2四半期は売上高773億円と前年同期比7%増となった一方、営業利益は300億円と前期比23%減に沈んだ。国内外でゲーム内の仮想通貨の消費が伸び売上高は3四半期ぶりに増収となったが、広告宣伝費の積み増しなどにより、営業利益は3四半期連続で減少した。
■下方修正と通期減益は上場後で初めて
下方修正後の通期計画は、売上高1600億~1700億円(前期比1~7%増)、営業利益500億~600億円(同27~39%減)。実は業績見通しの下方修正と通期営業減益は、08年12月の上場来初めてとなる。
売り上げが計画未達となった要因は、国内外におけるタイトル投入の遅延と想定を超える海外タイトルの不振だ。バンダイナムコゲームスが提供する「アイドルマスター ミリオンライブ!」や「ONE PIECE アドベンチャーログ」など有力タイトルを中間期までに投入する予定だったが、開発体制が追いつかず第3四半期以降にずれ込んだ。海外は12年5月に買収した米国のゲーム会社の貢献などを見込んでいたが、広告宣伝に見合う売り上げが得られなかった。
12日、東京都内で会見した田中良和社長は「投入が遅れたタイトルは下期に貢献する。海外事業も着実に進んでおり、やっていることは間違っていない」と強調した。
■際立つDeNAとの格差
グリーが業績不振に苦しむ一方、目下好調な業績を上げているのが、ライバルのディー・エヌ・エー(DeNA)だ。
2月7日に発表した2013年3月期第3四半期(12年4~12月期)決算は、売上高1502億円(前年同期比44%増)、営業利益586億円(同37%増)。通期でもほぼ同様の増収増益幅を確保する計画を発表した(国際会計基準を採用しているため、公表資料の売上高は「売上収益」と表記)。無料通話・メールサービス「comm(コム)」への広告宣伝投資が膨らみ前四半期比の営業利益は若干減少したが、同要因を除けば5四半期連続の増収増益となった。
牽引役はIP(=Intellectual Property。知的財産)タイトルと呼ばれる、開発会社が提供するゲームだ。
DeNAのモバゲー上ではバンダイナムコゲームスが提供(開発はサイゲームス)する「アイドルマスター シンデレラガールズ」や、同社と共同で開発を行う「ワンピースグランドコレクション」、「ガンダムカードコレクション」がいずれも月商10億円を超えると見られ、最も貢献度が大きい。
グリーもモバゲーの後を追い、バンダイナムコゲームスの「ガンダムマスターズ」を積極的に売り出しており、今下期はモバゲーと類似タイトルを投入する。
■現実味を増す「中抜き」論
バンダイナムコゲームスを擁するバンダイナムコホールディングスはソーシャルゲームの年間売上高を前期比3倍の460億円に引き上げており、同社はプラットフォーム運営会社にとって欠かせない存在だ。
しかし、裏を返せばDeNAは「探険ドリランド」などがあるグリーと異なり、バンダイナムコゲームスを除いた自社開発のゲームでヒットが生まれていない。守安功社長も決算説明会の席上で「自社のゲーム開発については、今後の課題だ」とコメントしている。
海外事業もグリーと同様、いまだに芽が出ていない。13年3月期第3四半期(12年10~12月期)の海外仮想通貨の消費は5000万㌦程度だったが、「損益分岐には1億数千万㌦のコイン消費が必要」と守安社長は言う。
一方のグリーは同時期2000万弱㌦のコイン消費にとどまり、「当初発表していた13年6月期第4四半期(13年4~6月期)の黒字化は先になる」(秋山仁コーポレート本部長)という。昨年半ばには「世界を獲る」と両社幹部が息巻いていたが、情勢は明らかに”トーンダウン”をしている。
さらに不安材料となるのがスマートフォンの普及だ。スマホの利用者増加は一見すると、ソーシャルゲームに追い風に見えるが、それはゲームの開発・提供側に限られる。
グリー、DeNAは、基本は集客装置としてのプラットフォームの役割が大きく、開発会社がスマホへの直接配信を始めれば「中抜き」をされかねない。
「わざわざ4割の手数料(携帯キャリアへの手数料1割含む)をグリー、DeNAに払うよりも3割の手数料で済むアップストア、グーグルプレイの方が魅力。特に海外展開を行う上では、グリー、DeNAのプラットフォームに出す意味はない」というスタンスで臨む開発会社も増えてきた。
■パズドラの台頭で景色が一変
こうした中抜き論は以前から指摘されては打ち消されてきたが、「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント運営)の台頭が景色を一変させている。
パズル&ドラゴンズはサービス開始から1年足らずで800万人のユーザーを獲得し、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価もこの1年間で10倍近くに急騰した。配信先はグリー、モバゲーを通さずスマホへの直接配信に限定しており、このような大型タイトルが増えれば、ますます見通しは厳しくなるだろう。
ある開発会社の幹部は、「グリー、DeNAがスマホ時代に生き残る道は、プラットフォームよりも開発会社に徹すること」と指摘するが、国内での成功体験を捨てゲーム開発に特化するのは容易ではない。インターネット企業としての自負もあり、ゲーム一点集中へ踏み切るには相当の覚悟も必要になる。
いち早く業績悪化に転じたグリー。DeNAも同じ道を辿るのか。早ければ、昨年5月のコンプガチャ騒動から1年となる次の決算で答えは出る。
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http://news.livedoor.com/article/detail/7404549/
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─