2014年6月26日木曜日

つまらなそうな仕事を楽しむコツ

なんの苦労もなく仕事をしている人のほうが楽しそうに見えますが、そうでしょうか? イチロー選手は苦労した方が楽しいと語っています。その理由とは……?


 イチロー選手は、ヒットを量産する原動力は何かと聞かれて、「モチベーションは野球が好きだということだ」と答えた。それがモチベーションを高め、成果につながっている。
 だが、単に好きだからといって成果に結びつくわけではないことは、「走るのが好き」なだけではなく、幼少期に母親から褒められた記憶が原動力になっていた高橋尚子選手や、機械いじりが好きなだけではなく、自分で状況を好転させようという姿勢を持っていたからこそ成功につながった本田宗一郎のエピソードから分かるだろう。
 イチロー選手は、自分のモチベーションについて、次のように語っている(児玉光雄『この一言が人生を変える イチロー思考』三笠書房)。
これでいいと思えるものを見つける。確かに、その瞬間は『いまは、これでいい』って思えるんです。でも、1週間後には、また変わってくる。『これでいい』と思っていたものが、『いい』とは思えなくなってくる。それで、今度は『もっと、いいもの』をまた探し求めなくてはならない。この繰り返しなんですよね。でも、この探し求める、ということが面白いし。これが、野球を続けられるモチベーションなんですよね。
 (写真はイメージです)
 野球が好きというのは、このような飽くことのない探求心に裏打ちされたものといえる。探求心こそが自分の仕事を楽しくするための重要な要素なのである。
 「仕事が楽しくない」などと不満を口にする前に、仕事を楽しいと思えるだけの探求をしているかどうかを自分自身に問いかけてみる必要があるだろう。「仕事が楽しい」というのは、お笑いを見て「面白い」というのとは違って、自分がとことん工夫し、探求し続けたあげくに手に入る充実のことなのだ。
 さらに、イチロー選手は、これまでの人生を振り返って、次のように語っている(前掲書)。

自分は幸せな人間だと思う。不幸な人間って、何事も何の苦労もなくできてしまう人でしょう。でも、それでは克服の喜びがなくなってしまう。

『楽しんでやれ』と言われるんですけど、僕はその言葉の意味がよく分からない。『楽しむ』というのは、決して笑顔で野球をやることではなくて、充実感を持ってやるもんなんだと僕なりに解釈してやってきましたけど、それにたどり着くまでには『楽しんでやる』というような表現は、とてもできなかったですね。

 困難に直面し、もがき苦しんだ末に打開できた時こそ、「やったぁ!」という達成感が得られるのだ。始めからものごとが順調に進んだら、克服したことによる達成感は得ることができない。もちろん、困難を克服しようとせずお茶を濁している場合も、何ら達成感はないだろう。どちらの場合も、仕事を楽しむことはできない。
 好きな仕事なんてそう簡単に見つからない。楽しみながら稼げる仕事なんて、なかなかないものだ。
 何かを本気でやってみなければ、好きな仕事にめぐり逢うことはないだろう。楽しいと思える域に達するまでには、楽しくない時期でも本気で取り組むプロセスが不可欠だ。
 そんなとき、自分のストーリーを持っていれば、さっさとやめてしまいたくなるようなつまらない仕事にも全力で取り組むことができる。

結果よりプロセスを楽しむ

 一生懸命にやって、壁を越えることができたとき、達成感に満たされる。そのとき、ふと我に返って、日々の生活が充実していたことに気づき、その仕事にやりがいを感じる。それが仕事が楽しいと思える瞬間だ。
 仕事を楽しめるようになるためにも、やる気を持続させるためにも、重要なのは成果主義でなくプロセス主義を身につけることだ。つまり、結果をあまり気にせずに、仕事をするプロセスに集中することである。プロセスへの集中が仕事の質の向上をもたらし、結果的に成果も上がることが多いのである。
 結果がすべてのスポーツの世界でも、プロセス主義は力を発揮する。「ここで点を取られたらおしまいだ」「これで負けたら何のためにがんばってきたのか分からない」などと結果を気にすると、動きが萎縮したりして、力を発揮できずに終わることが多い。結果を気にせず、「今、この瞬間」に「やるべきことに集中する」ことで力を充分に出し切ることができ、それが良い結果につながったりする。
 これは、あらゆる仕事にも当てはまることだ。大切なのは、プロセスを生きる姿勢を身につけることである。プロセスを意味づけるようなストーリーを持つことである。
 そこに必要なのは、ほんのささやかなストーリー。ストーリーをどうしたら持てるようになるかについては、本書5章で詳しく説明する。まずは力強いストーリーを生きることで結果を出した人たちを、もう少し見ていくことにしよう。

http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1406/24/news018.html
─情報元:誠 Biz.IDサイト様─