2014年12月22日月曜日

“女性の貧困”最前線――『失職女子。』著者と貧困ルポライターが語る



「女性が輝く日本へ」と声高に叫ばれるスローガンを、もっともしらじらしい思いで聞いているのは当の女性たちだろう。単身女性を取り巻く実態は、働く世代の3分の1が年収114万円未満の低所得。〈若年女性の貧困〉はもはや、待ったなしで解決しなければいけないところまできている。

 貧困当事者として生活保護を受給するまでの道のりを描いた『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』が話題の大和彩さんと、貧困からセックスワークにからめとられる女性たちを追いつづけ、最新作『最貧困女子』(幻冬舎)に著した鈴木大介さんに、女性の貧困が内包する問題と、今後の課題について語ってもらった。

――なぜここまで女性が貧困化したのでしょう?

大和:女性は男性より非正規雇用で働く人が多いですよね。加えて、現在は男性であろうと、既婚女性、未婚女性、シングルマザーであろうと、誰しもが働きつづけなくてはいけない時代。そんななかで、女性の賃金だけ低くおさえられ、雇用環境の整備が追いついていないことが、一番の原因だと思います。私も失職するまえに正社員として働いていた時期もありましたが、ほとんどは契約社員と派遣。会社の倒産や派遣切りで失職し、その後は〈35歳の壁〉にはばまれ、100社連続不採用……。低所得と貧困は、常に隣り合わせです。

鈴木:僕は貧困女子のなかでも可視化されていない層、差別されている層を取材してきました。家庭に事情があって家出し、セックスワークにからめとられる少女たち。離婚後、子どもを養うために出会い系で売春相手を探すシングルマザーたち……。『失職~』を読んで、彼女らが何に困っているのか、ようやく見えました。大和さんは「文字は読めるのに、それを頭のなかで言葉や文にできない」ときがありましたね。

大和:生活保護を申請したころのことですね。

鈴木:貧困が思考力や判断力を奪っていく過程がよくわかりました。きっと彼女たちも大和さんと同じ景色を見ていたんですね。そんな状態で生活保護にたどり着くのはとてもむずかしい。とてつもなく空腹のとき、100メートル先においしい御馳走が用意されていても、目の前にあるパンを手に取るようなもので、手近にある脇道にそれてしまいます。彼女たちにとってはそれが、セックスワークなんです。

――その一方で、〈生活保護〉というワードを見ただけで、反射的にバッシングする人たちもいます。

大和:バッシングといっても「貧困は自己責任」「甘え」「仕事をえり好みしているだけ」とパターン化していて、どれも実情を知らずに言っているだけです。仕事も頼れる人もなく、貧困で身動きがとれなくなっている女性に、「困ったら女は体を売ればいい」という言葉が浴びせられることも多いですね。

鈴木:僕も『最貧困女子』を書くことで、自己責任論を封じ込めたいと考えていました。

大和:そんな状態の人が制度によって救われるのが、先進国だと思うのですが……。

鈴木:自己責任論は、決して勝者の理論ではないんですよ。「自分だってぎりぎりの稼ぎでがんばっているのに」という、貧困と隣り合わせで孤独な人たちが、この理論をふりかざしているんです。

大和:働きたくても仕事のない人がどうしても出てくるのが現在の日本社会ですから、自己責任論では片づけられませんよね。私は申請をする前に、「生活保護とは、福祉である」という一文に出会って、目が覚める思いでした。福祉は社会を豊かにするもの。病気になっても貧困に陥っても、福祉に受け止められる。そんなセーフティーネットが用意されているのが、先進国だと思います。

鈴木:健康保険と同じですよね。貧困に陥った人を切り捨てていくと単純に労働力が減ります。生活保護はそれを防ぐためのものです。その福祉が税収を圧迫しているというなら、乱暴な話、真っ先に切り捨てられるべきは高齢者ですよ。でも、そういうわけにはいかない。

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─情報元:日刊SPA!サイト様─