2016年8月19日金曜日

吉田沙保里がはまった“落とし穴” 予期せぬ銀メダルも色あせない功績

金以上の価値がある銀メダル





「今回は組み合わせに恵まれている」

五輪を含めた世界大会で16連覇中のレスリング・吉田沙保里が敗れた。しかも、五輪の決勝という最高の舞台で、力を発揮することなく。その瞬間、吉田はマットに突っ伏して泣いた。「自分の力が出し切れなくて悔しいですし、応援してくださった方に申し訳ないです」。涙はいつになっても止まらなかった。

 4連覇が懸かったリオデジャネイロ五輪・女子53キロ級決勝の相手は、過去2戦2勝のヘレン・マルーリス(米国)。ロンドン五輪直後の世界選手権決勝でも対戦しており、そのときは吉田が勝利した。顔を合わせたのはそれ以来だったが、吉田自身それほど心配はしていなかった。そもそも決勝の相手として想定していたのは、マルーリスが準決勝で破ったソフィア・マットソン (スウェーデン)だったのだ。決勝進出を決めたあと、吉田は相手を知って驚いていた。

「ヘレンが勝ったということでちょっとびっくりしています。過去、ヘレンには負けたことがないんですけど、4年経って伸びてきていると思うので、私もこれまで以上に気合いを入れ直して頑張ります」

 ただ、同時に吉田はこうも言っていた。

「今回は組み合わせに恵まれているんですよね。私はあんまり組み合わせに恵まれる人ではなかったんですけど、神様が……、いや(亡くなった)お父さんがそうしてくれたのかな」

 栄和人監督も、決勝後にこう明かした。

「マットソンだったら不安を感じていたんですけど、マルーリスだったので、正直いけるかなと思ったんです」

徹底的に研究された吉田のスタイル

マルーリス(左)は吉田対策を極め、偉大な女王から金星を勝ち取った【写真:ロイター/アフロ】マルーリス(左)は吉田対策を極め、偉大な女王から金星を勝ち取った【写真:ロイター/アフロ】 過去の対戦成績、そして一番のライバルだと思っていた選手の敗退で、無意識のうちに隙ができてしまったことは否定できない。「ずっと吉田を倒すために練習してきた」というマルーリスは、吉田のレスリングを徹底的に研究してきた。

 タックルが持ち味の吉田に対して、マルーリスは腰を低く落とし、手を握って、守備を固めてきた。吉田が隙を突いてタックルに入ろうとしても、すぐに後ろに下がられる。まったく懐に入り込めない状態が続いた。第1ピリオドに1ポイントを先取したものの、思うようにペースを握れない。迎えた第2ピリオド、体勢を崩したまま出した首投げを返され、逆転されてしまった。その後は「空回りが続き」(吉田)、逆に1−4とリードを広げられた。

「ヘレンは4年前とパワーが全然違いました。元々、彼女は55キロ級だったので、減量が多くてヒーヒー言っていた。53キロ級に落とせるのかなと思っていたんですけど、しっかり落としてきて……。そしてあれだけ動けて、強い相手もどんどん倒してきた。本当にヘレンは強かったです」

 試合後、吉田は泣きじゃくりながらも、マルーリスを称賛した。そして、自らに隙があったことも認めた。

「いつもと違う感じは多少あったかもしれないです。決勝ですし、上がってくる人は強いので、気は抜けないと思っていたんですけど、そこに落とし穴があるとは思っていなかったですね」


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