2012年4月9日月曜日

「天才が生まれる社会」をどう作るか



経済成長のほとんどは、非常に単純な源を持っている。新しいアイディアだ。富を生み出すのはわれわれの創造性なのだ。では、どうしたら革新のペースを上げることができるのだろうか。新たなピカソやスティーブ・ジョブズたちを鼓舞することは可能なのだろうか?

この問いへの答えは、歴史に隠れている。統計学者のデヴィッド・バンクスは数年前、「多すぎる天才」(excess genius)をテーマに短い論文を書いた。


天才たちが出現する時代や場所は集中する傾向があり、天才たちは「クラスター」として生まれる傾向がある。バンクスは紀元前440年から380年のアテネを例に挙げている。古代アテネは、プラトン、ソクラテス、トゥキディデス、ヘロドトス、エウリピデス、アイスキュロス、アリストパネスなど、驚くほど多くの天才を生み出した。西洋文明の基礎を築いたといえるこれらの天才は、同じ場所にほとんど同時に存在していた。

あるいは、1440年から1490年のイタリアのフィレンツェを見てみよう。人口7万人足らずだったフィレンツェは、わずか半世紀の間に、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ギベルティ、ボッティチェッリ、ドナテッロなど、歴史に名を残す芸術家を数多く輩出した。シェークスピアの時代のイギリスも、ベン・ジョンソン、ジョン・ミルトン、エドマンド・スペンサー、フランシス・ベーコンなどが同時代に同じ都市に住んでいた。

こういった集中はなぜ起こったのだろうか。バンクスは平和や繁栄は理由にならないと述べる。プラトンの時代、アテネはスパルタと膠着的な戦争状態にあった。バンクスは学術論文の結論として、この現象の理由についてはわからないと述べている。

しかし、その理由は完全に謎というわけでもない。創造的才能の「集中」という現象について分析していくことは可能だ。創造性が集中した理由は、実はなんらかの「メタ・アイデア」(meta-idea)が存在し、それが他のアイデアを広めることに役立っていたという点にあるだろう。メタ・アイデアとは経済学者のポール・ローマーが提唱した概念で、特許制度、公共図書館、万人向けの教育といったものを指す。

まず、多様な人間が交差しえたということが利点だったのは明らかだ。過去に天才が集中した場所が、すべて商取引の中心地であったことは偶然ではない。そのような土地では、多種多様な人々が集まってアイデアを交換しあうことが可能だ。人口全体において、大学の学位を持つ移民が1%増えると、特許取得数が9~18%増加するという研究データもある。

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─情報元:WIRED.jpサイト様─