ペンタックスリコーイメージングが平成24年10月に発売したミラーレス一眼カメラ「Q10」が売れ行きを伸ばしている。
名刺サイズの“超極小ボディー”ながらレンズ交換式の本格派。合計100通りから選べるカラーバリエーションも老若男女を問わず幅広く人気を集めている。開発陣が開発過程で重視したのは「割り切り」。超小型をキーワードに、思い切って捨てるべきところは捨てたことが奏功した格好だ。ペンタックスリコーは、今回のヒットをテコに再建途上のデジカメ事業の浮上を目指す。
1月31日から2月3日までパシフィコ横浜(横浜市)で開かれたアジア最大のデジカメ展示会「CP+(シーピープラス)」。その会場に、イベント期間を通じ、常に人であふれている一角があった。ペンタックスリコーのブースだ。注目を集めたのは、昨秋公開されたアニメシリーズ映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」とのコラボレーションで製作し4月に発売するQ10の特別モデル。
「レイ」と「アスカ」という主要キャラクターの人形に首からカメラを提げさせるなど趣向を凝らし、来場者がデジカメやスマートフォン(高機能携帯電話)で熱心に撮影を続ける姿が目立った。人気アニメのエヴァとの相乗効果もあったが、Q10に対する関心の高さを裏付けた出来事だった。
Q10は、ミラーレスカメラの機種別販売ランキングで昨年11月に首位になった。家電量販店で、いまなお売れ行き好調だ。「今までになかった個性を打ち出したことが受け入れられている」。
企画段階から開発に携わったマーケティング統括部企画グループの若代滋マネジャーは、ヒットの理由をこう分析する。受け入れられた最大の要因は超極小ボディー。ミラーレス一眼カメラでありながら、小型デジカメやスマホ並みか、それより小さいサイズが受けた。
小型化は、思い切った「割り切り」で実現した。譲歩したのが画質。デジカメの画質は撮像素子(イメージセンサー)を大型化すればよくなるが、その分、ボディーサイズが大きくなる。このため、画質は割り切り、小型デジカメと同等のセンサーを使うことで、超極小ボディーを実現させた。
カメラの開発を手がけた開発統括部・第2開発部の田口一郎マネジャーは毎日、通勤時にQ10を首から提げているが「小さくて軽いし、全く苦にならない。こうした小型軽量の性能が人気になった。目指したコンセプトは正解だった」と話す。
Q10のもうひとつの特徴は、ボディーの色が豊富なことだ。緑やオレンジ、金色など100通りから選べる。通常のデジカメは黒、銀、白などの定番がほとんどで、これまでの一眼レフカメラでは考えられなかった。100通りを実現できたのは、外装をマグネシウム合金からプラスチックに換えたため。プラスチックの色を変えれば、どんな色でも作れる。「いろんな色のニーズに対応しようと思ったら、こうなった」(若代氏)。
豊富なボディーカラーは、店頭で顧客の関心を高める効果もあった。大型量販店などでは、20色程度を並べて展示されていることが多く、華やかな色合いにひかれて、その場で購入を即決するユーザーも多いという。
「レンズ交換式カメラで超小型のカメラを開発したいという思いは15年ごろからあった」と、若代氏は振り返る。
しかし、当時の半導体の性能などを踏まえれば、「名刺大」まで小型化するのは難しい状況にあった。経営的にもHOYAとの合併を経て、23年10月にリコー傘下に移るなど、揺れ動いた。
もっとも、リコーは、特徴あるデジカメ開発に理解を示した。また半導体も時代の流れの中で進化。さらにカメラに小型化を求めるニーズの高まりなどで開発に向けた土壌は整った。
Q10は23年秋に本格開発に着手。前機種「Q」のバージョンアップという位置付けだが、Qにはなかったカラーバリエーションや、写真の色合いを鮮明にできる画像処理機能も追加。満を持して発売した。Q10について、リコーの近藤史朗社長も「使いやすい良いカメラ」と太鼓判を押す。
ペンタックスリコーが目指すのは、Q10を「入り口」にカメラに関心を持つユーザーを増やすこと。若代氏は「Q10で気軽に楽しんでもらい、本気で撮りたい時はさらに高性能な一眼レフも併用してもらいたい」と話している。
http://news.livedoor.com/article/detail/7440016/
─情報元:産経新聞サイト様─