今年で30周年を迎えた東京ディズニーリゾート。古びることも廃れることもなく“夢の国”であり続けているのには、「いつも新鮮な感動がある」「スタッフの笑顔がステキ」などさまざまな理由が挙げられるだろうが、忘れてはいけないのが「ほかの遊園地やテーマパークにはない清潔さ」だ。しかし、どうやってあの塵ひとつない園内を保っているのだろうか。
その謎を解き明かしているのが、先月発売された『ディズニーの魔法のおそうじ』(安孫子 薫/小学館)という新書だ。著者は、東京ディズニーランド(TDL)の清掃や安全管理などを行う「カストーディアル」部門の元部長。本書によれば、TDLの掃除のコンセプトは「世界一安全で清潔な場所」、モットーは「汚れたから清掃するのではなく、汚れる前から清掃」。通路は15分おき、トイレは45分おきに巡回し、閉園後は「新規開業時点に戻す」ことを目的に作業。なんと清掃活動は24時間行われているのだ。
まず、ゲストが帰った閉園後はゲストがいるとできない作業を行い、深夜0時には路面にアトラクション、店舗、レストラン、レストルームなどを清掃。開園1時間前には清掃状態の点検、安全の確認、開園に向けた仕上げの清掃を、開園後はご存じの通りさまざまなキャスト(スタッフ)が清掃作業にあたる。ここで疑問なのが、「ゲストがいるとできない作業」とは何か?ということ。これは、たとえば開園中に路面に汚れを発見したとしたら、まずはスイーパー(ちりとりとほうきを手にしたキャスト)が初歩的な対応を行う。が、ゲストの前で大がかりな清掃はできないため、閉園後に入念にシミ抜きまで行うのだ。「一つの汚れを完璧な状態に復帰させるまで、キャストが入れ替わっても徹底的に、多重的に清掃を行う」。これがディズニー流“多重清掃”という概念だ。
この、深夜の清掃にあたる「ナイトカストーディアル」が目指す清潔さの基準は「そこで赤ちゃんがハイハイできるか」。そのため、閉園後は園内のすべての路面を、水圧をかけた水で洗い流すのだという。また、アトラクションの清掃も徹底しており、キャッスルカルーセル(大型木馬)の90頭の白馬ならば、それぞれに取り付けられた真鍮製ハンドルは専用の磨き粉を使いピカピカに。ときにはホーンテッドマンションなどの“時代を感じさせる汚れ”が意図的にペイントされているアトラクションで、「本物の汚れと勘違いしてきれいに拭き上げてしまった」「クモの巣を本物と誤認して取り去ってしまった」という出来事もあったのだとか。それもまたキャストたちの熱心さが伝わるエピソードではないか。
あの広大な敷地を清掃するのに「赤ちゃんがハイハイできるか」という基準は無謀とも思えるもの。しかし、著者は当初「アイスクリームを落としても食べられるレベル」という基準を主張したという。さすがに却下されたそうだが、基準を設けることでスタッフが目指すべきレベルを明確化できていることが大切なのだ。もちろん、こうした努力はすべて「ゲストの安全」を考えてのこと。そして、究極の目的は「ゲストへのおもてなし、ハピネス(幸福)の提供」。この意識こそが、30年経っても驚異のリピート率を誇っている最大の要因なのだろう。
http://news.livedoor.com/article/detail/7819428/
─情報元:ダ・ヴィンチ電子ナビサイト様─