2013年12月9日月曜日

ホノルルマラソン“バブル”ははじけたか? 日本人が過半数を占める楽園マラソン事情

楽園マラソン。世の中には、こう表現されるレースがある。世界で最もメジャーな楽園マラソンといえば、毎年、12月の第2日曜日に開催されるホノルルマラソンだ。今年は12月8日。そう、まもなく行われる。
先ほど「世界的」と書いたが、本気のランナーからいうと、ホノルルマラソンの評価は高くない。いちばんの理由は、温暖な気候ゆえにタイムが出にくいからだ。そのため、世界トップレベルの選手がホノルルでガチンコ対決することはほとんどない。しかし、この日本では、ホノルルマラソンの人気はすさまじいモノがある。
ご存じの方も多いが、ホノルルマラソンは日本からの参加者が突出している。ホノルルマラソン期間中にワイキキを歩いていると、よく知り合い(ランナー仲間)に遭遇するほどだ。具体的にいうと、昨年(2012年)はエントリー約3万1000人のうち、過半数の約1万6000人が日本人だ。
この数字がどれぐらいすごいのか。規模や雰囲気などから考えると、日本ではNAHAマラソンがイメージに近い。しかし、ホノルルマラソンの1週間前に行われるNAHAマラソンは、昨年約2万8000人がエントリー。沖縄県外の応募が約1万人で、海外はたったの376人だった。
この数字を見れば、ホノルルマラソンの“異常”ともいえる実態を理解できると思う。ちなみに沖縄県那覇市で開催されるNAHAマラソンのサイトは、日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応している。もし、NAHAマラソンの参加者約2万8000人のうち、約1万5000人が中国人だったらどうだろう。ちょっと想像を絶する世界になるだろう。これと同じことを、毎年、日本人がホノルルで行っていることを、まずは知ってほしい。それがイイか悪いかは別として。

■小さな異変?

現在も大人気のホノルルマラソンだが、近年はそのパワーが徐々にダウンしている。昨年(2012年)のホノルルマラソンは40回記念大会で、しかも円高ということもあり、日本人の出場意欲を刺激させる材料があった。しかし、10年スパンで考えると、2006年大会をピークに、日本人選手の参加者数は減少している。2006~2012年大会のエントリー状況は次のとおりだ。
2006年に62%を誇っていた日本人参加率は、昨年には54%まで落ち込んでいる。日本でも東京マラソンなど人気レースが誕生したこともあり、ホノルルマラソンのステータスは東京、大阪、名古屋など日本の大都市マラソンに押されぎみだ。ちなみに東京マラソンがスタートしたのが2007年。この頃から、ホノルルマラソンのブランドが揺らぎだしたといえるかもしれない。
ホノルルマラソンは長年、日本航空がメインスポンサーを務めており、今年も唯一の特別協賛だ。現在は協賛がMUFG CARDとアディダス ジャパンの2社で、賛助協賛がNTTドコモとSATOHAP(佐藤製薬)の2社となっている。この協賛企業のラインナップからもわかるように、ホノルルマラソン“ビジネス”は明らかに外国人(日本人)に向けた仕様になっている。
たとえば、アディダス ジャパンは協賛金を払うことで、「ホノルルマラソン」ブランドのウエアやグッズを販売できる権利を得て、他社メーカーとの差別化を図っている。
では、日本人参加者のピークがあった2006年はどうだったのか。日本航空の特別協賛は同じだが、協賛がナイキ、DC CARD(現在のMUFG CARD)、コナミスポーツクラブ、アミノバリューの4社(ブランド)もあった。中でも大きいのが、2004年からサポートしていたアミノバリューが2006年限りで撤退したことだろう。ホノルルを離れたアミノバリューは、東京マラソン(2007年~)のオフィシャルパートナーになっている。
その後は、コナミスポーツクラブも2007年大会で協賛を切り上げ、2009年を最後にナイキも撤退。2010年の協賛はMUFG CARDの1社だけとなったが、2011年にアディダス ジャパンが加わり、現在のかたちになった。なお、ナイキは協賛企業の撤退を決めると、ワイキキにあった「ナイキタウン」も閉店している。そして、協賛企業が減ったホノルルマラソンは、エントリー料金の値上げに踏み切った。

■「高値の花」化するホノルル出場

2006年大会のエントリー料金は日本受付の第1期が1万1200円、ホノルル現地受付が125ドル。それが、翌2007年大会では日本受付の第1期が1万5000円、ホノルル現地受付が175ドルに大幅UPした。
その後も年々、エントリー料金は増額していき、今年(2013年)は、日本受付の第1期が2万2000円、同第2期が2万5000円、ホノルル現地受付が290ドルまで高騰した。現地受付のエントリー料を7年前と比較すると、実に2.32倍も上昇していることになる。東京マラソンのエントリー料が1万円ということを考えると、ホノルルマラソンの参加費の割高感は否めない。そして、問題はエントリー代金だけではない。日本からの参加を考えた場合、渡航費と現地の滞在費も高騰しているのだ。
たとえば大手旅行代理店では、スタンダード・エコノミークラスの金曜日発3泊5日コースが大人1人(2人1室利用)で約26万円(燃油サーチャージ代込み)だ。レース直前説明会や、練習会などマラソンサポートプログラムが付随しているとはいえ、かなり高額だ。ちなみに、この旅行会社が特別に高いわけではなく、ほとんどの旅行会社が強気ともいえる料金設定をしている。
ちなみにホノルルマラソン翌週になるとエコノミークラスホテル利用の金曜日発3泊5日コースが、大人1人(2人1室利用)で約9万円(燃油サーチャージ代込み)からある。マラソンサポートプログラムを高く見積もって5万円だとしても、ホノルルマラソン開催時にホノルルへ行くには、10万円ほど余分にかかることになる。言い換えれば、日本から出発するランナーのホノルルマラソン料金はプラス10万円だ。
ランナーとその家族、マラソンツアー関係者などを含めると、ホノルルマラソン開催時は2万人以上の日本人がいると推測できる。それはやはりものすごい数字だ。当然、日本からホノルルへの便は奪い合いとなる。マラソンツアー以外で行こうとしても、旅行代理店に航空券をガッチリ抑えられているため、この期間にチケットを獲得するのは難しい。
筆者はホノルルマラソンを3回走ったことがあるが、ホノルルは「もう一度走りたい」と思わせるような大会だ。しかし、個人的には師走の多忙な時期に、しかもエントリー料金を含めて、30万円以上もかかるレースに出る余裕はない。
大会当日の年齢が7歳以上なら参加できて、レース前日までエントリー可能。制限時間もない。非常にお気楽な大会なはずなのに、日本からの参加となると急激にシビアになる。ホノルルマラソンは若い女性ランナーの参加が多いのだが、筆者の周囲では「ホノルル行き」を断念する女性ランナーも少なくない。
まだ薄暗い朝5時。花火とともに飛び出して、多くの仲間とともにゴールを目指す。南国の日差しはランナーには厳しいかもしれない。でも、42.195kmを駆け抜けて、フィニッシュしたときの爽快感は最高の気分だ。ストイックなマラソンという種目なのに、なぜか自然と笑顔がこぼれしまう大会、ホノルルマラソン。参加の際には、ツアー料金とエントリー料以上の“思い出”を、ぜひ、つくってほしいと思う。

http://news.livedoor.com/article/detail/8320651/
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─