2014年1月28日火曜日

Googleも注目するIoTとはなにか?


IoTを知っているだろうか? 半べそを表した顔文字ではなく、「Internet of Things」の略だ。直訳するとモノのインターネット――つまり、人間が発信するさまざまな情報ではなく、たとえばクルマや家、家電などの物体からインターネット経由で自律的に情報を発信させて、それを活用していこうとする動きのことだ。IoTはビッグデータと絡めて、今後の社会全体を変えていく大きな動きになる。

我々人間は、急速なスマートフォンの普及により常時インターネットに接続できるようになった。現在地や移動状況はもちろん、心拍数や血圧などの生体的な情報を逐次アップロードすることもできる。さらに思考や、視覚・聴覚といった五感による情報さえも、ソーシャルメディアなどを通じてインターネット上にアップしている。つまり、人間一人ひとりがIP化しはじめたといってよい。そしてIoTとは、人間だけでなく我々がつくりあげた文明に属するすべてのモノをインターネット化していくことなのだ。

近年のビッグデータブームに絡んで、IoTは急速にIT系メディアや企業の間で話題になっているが、考え方自体はそもそもインターネット黎明期から存在している。「ビールのジョッキがインターネットにつながっていて、残り少なくなったら自発的に店員を呼んでくれたら便利」「冷蔵庫の中身を確認して自動でレシピを出してくれたらよい」などと妄想を膨らませたものだ。物理的にいえば簡単で、すべての機械や部品などにIP(インターネットプロトコル)アドレスを振り、その状態変化をリアルタイムでインターネットにアップロードする仕組みがあればよい。

これまでIoTが実現しなかったのは、IPv4ではIPアドレスの数自体に制限があったからだ。IPv4におけるIP数は43億個、つまりスマートフォンがこのまま普及していてもIPアドレスを全人類に振り当てることさえできない。モノに振るどころではなかった。

しかし、IPv6におけるIP数は340澗(かん)個。澗は10の36乗を表す。理屈上でいえば、我々の目に見えている地球上の物体すべてにIPアドレスを与え続けても数百年は保つだろう途方もない数だ。だから、もはやIPアドレス不足を気にする必要はない。

あとはインターネットに接続させる仕組みと、電源の確保をどうするかを考えなくてはならないが、いますぐビールジョッキをインターネット化する必要があるわけでもなく、まずはすでにWi-Fiと電源の問題をクリアしたモノのインターネット化を実現すればよい。たとえば家電や自動車、家そのもの、もしくは電車や信号機でもよい。ハイテク商品や設備などを常時インターネット接続させることをまず優先する。

IoT化の最初の利点は、オフィスや家庭でのスマート化が進むことだろう。たとえばプリンタのインクが無いなどの状態がリアルタイムで届けば、印刷したいときにインクがないといった不都合が減る。さらにいえばインクがある程度減ったらAmazonに自動発注するといった設定もできるようになる。

つまり、初期のIoTでは消費者が目に見える形での利便性を高めることで市場が形成されるのだが、同時に目に見えない応用がより大きな市場として立ち上がる。企業目線での話だが、自社が製造した製品の利用状況をリアルタイムで把握できれば、生産ラインや営業在庫などとリンクをすることで、より精密かつ効率的な経営へとつなげることができるわけだ。自動車でいえば、消費者の行動や路面情報などのさまざまな情報が入手可能になる。それらを時間軸や位置情報などと組み合わせれば、多くの分析データを生み出せ、事業に生かすチャンスが生まれる。

人間が発信するビッグデータという意味では、検索データ・メール・スマートフォンの利用状況・ソーシャルデータなどを労せずして入手できるGoogleが、市場リーダーとして最有力候補になる。しかし、モノが発信するビッグデータ、という意味ではハードウエアメーカーにも大きなチャンスがある。

だからこそGoogleもまた、ハードウエアメーカーになろうと考え、ロボット関連のベンチャーやNest(スマートサーモスタットのスタートアップ)の買収に動いているし、無人自動車の開発などに手を出している。人間発信型の情報収集はスマートフォンの次のデバイスとしてウェアラブルの開発に勤しむが、モノ発信の情報収集には自動車や家電、スマートハウスなどのハードウエアに対して大きく投資をする。GoogleはIoH(人間のインターネット)とIoT(モノのインターネット)の双方に対して投資を惜しまない。

正直ウェアラブルコンピューティングにおいてはAppleとGoogleに勝てそうにないので、日本企業としてはIoTにフォーカスを絞るしかないと思うのだが、AppleもスマートTVを出してきそうだし、残された時間はあまりないのではと感じている。

http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/34231/
─情報元:MdN Design Interactiveサイト様─