広告費の半分は無駄だった!?
――アドテクによって、広告業界が激変期を迎えています。
ここ3年間ほどで、業界構造は大きく変わっています。もともと広告の営業と言えば、営業マンが広告主を訪問し、料金表を見せて、その中から広告主がスペースや枠を選んで購入する形でした。これは紙媒体、Web広告とも共通です。ページ数や表示回数ごとに料金表を作り、それに基づいて広告費用を見積もります。たとえば、「東洋経済オンライン」にバナー広告を出したいとなれば、「料金は1回表示させるごとに2円。50万回表示すれば100万円」などと営業していたわけです。しかし、今後はこうした売り方ではやっていけない。テクノロジーの進化によって、広告として購入されるものと売買の手法が変化しているからです。
――具体的な変化とは?
広告業界には、百貨店王と呼ばれたジョン・ワナメーカー氏の名言があります。「広告に使っているおカネの半分は無駄とわかっている。問題は、どちらの半分が無駄かわからないことだ」と。この言葉に象徴されるように、広告主のニーズとして、誰に届いているのかわからない無駄な広告費を削りたいという思いがありました。
この課題を解決したのがアドテクのひとつ“オーディエンスターゲティング”と呼ばれる技術で、広告主が届けたいと思う人(オーディエンス)を選別し、その人にだけ広告を表示させる仕組みです。選別の条件は多岐にわたります。性別や年齢はもちろん、最近では検索履歴や商品の購入履歴、興味関心の属性によってもターゲティング(選別)できるようになりました。つまり、広告主は特定の媒体の「枠」を購入するのではなく、自分たちが届けたいメッセージの対象となる「人」を買うようになっているのです。
もうひとつの大きな変化が広告売買の株式取引化です。「RTB(Real Time Bidding)」という、Webサイト上の広告枠をリアルタイムに自動入札する技術が、アドテクの普及に欠かせないキーワードになっています。要は広告枠の競り売りです。これまで「1回の表示ごとに2円」などと決められていた広告料金が「時価」になりました。つまり、広告主がその広告枠に価値を感じれば、同じ1回の表示でも定価より高い5円で売れることもあれば、逆に0.1円で買いたたかれるケースもある。証券取引所のような広告売買が実現されたのです。広告料金は限りなくオープンになり、料金を決める権限も広告主のほうに移っています。
アドテクの発端は”余り”の広告
――アドテクノロジーはどのような背景から生まれたのですか?
もともとは、純広告と呼ばれる各媒体が持つ広告枠を媒体社が広告主へ直接売買する方法が主流でした。しかし、これには大きな課題がありました。
広告主が「Aサイトにバナー広告を5億回出したい」と希望した場合を考えてみましょう。ある月のAサイトのPV(ページビュー:サイトへのアクセス回数のこと)を5億PVとします。しかし、広告主が出稿を希望している翌月も、同水準のPVを確保できる保証はありません。PVはコンテンツ本数や時期的な要因で大きく変動するからです。しかし、広告を販売した後、広告主に「今月はPVが伸びず、表示回数が足りませんでした」とはサイト運営側である媒体社は言えません。そこで、表示回数がショートしないよう、「4億回表示分だけ販売します」となるわけです。このように、媒体社は、つねに少なめに広告枠を販売せざるをえませんでした。
すると、広告枠に余りが出てしまいます。結果的に、5億PVに達したとしても、その差である1億PV分に広告が表示されないことになってしまう。これは非常にもったいない。こうした課題をうまく突いたのが「アドネットワーク」と呼ばれる仕組みです。アドネットワークとは、多数のWebサイトから余った広告枠をまとめて広告商品化したものです。媒体社としては、余った枠を販売することができ、広告主にとっても通常よりも安い価格で買えるので、ハッピーなわけです。これがアドテクノロジーの発端であるアドネットワークが生まれた背景です。
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http://toyokeizai.net/articles/-/28026
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─