2014年3月22日土曜日

「2千万円払うか、俺と寝るか」強姦魔はヤクザを装い27人を襲った

「暴力団の者だが、あなたに復讐したいという依頼がある。俺と肉体関係を持ち、金を払えば助けてやる」
 あたかも暴力団組員であるかのように装い、27人もの女性を脅して強姦した上、現金を脅し取るという非道を繰り返していた男が大阪府警に逮捕された。
 「警察に言ったらおたくの家族を殺しに行く」。こんな脅し文句で追い打ちをかけ、中学生を含む10代~20代の女性に脅迫電話をかけて呼び出し、強姦やわいせつ行為に及んだ回数は約6年半で140回以上。「組に支払う金がいる」として、その都度奪った現金は計約160万円に上る。この男の長年にわたった非道は、被害女性の勇気ある申告で発覚した。(岡野祐己)
 ■「海外に売り飛ばす、いつでもさらえる」
 大阪府警曽根崎署に強盗強姦容疑などで逮捕されたのは、住所不定、無職、中西康浩被告(49)=同罪などで起訴=だ。被害女性は中学生を含む27人に及び、このうち告訴を受けた20人に対する146件の犯行を裏付け、送検された。
 同署は中西被告を平成24年9月に逮捕した後、17回再逮捕。大阪地検は計20回、強盗強姦罪や強制わいせつ罪などで起訴・追起訴した。中西被告は「性的欲求を満たし、金も欲しかった」と容疑を認めているという。
 卑劣な犯行はどのような手口で繰り返されていたのか。
 同署や起訴状によると、中西被告は18年4月ごろから、大阪府内を中心に洋服店や宝飾店、洋菓子店を訪れて女性店員らを物色。名札を見て名前を確認し、その後、暴力団員を装って店に電話をかけた。
 「山口組の中で依頼を受けて仕返しをする組織にいる。おたくに復讐してほしいと頼んでいる人がいるが、助けてほしければ2千万円払え。それが無理なら俺と寝れるか」
 「警察に言ったら、警察と組織がつながっているから分かるし、言った時点でおたくの家族とかも全部殺しに行くから」
 「今すぐに拉致して海外に売り飛ばすこともできる。いつでもさらえる」
 1人の女性への脅迫電話は700~800回に及ぶこともあった。
 被害者らは恐怖に怯え、誰にも相談できないままホテルや中西被告の自宅に呼び出され、暴行された。さらに「組織にお金を払わなければならない。期間は2年間。払えないなら千円でも2千円でもいいけど、ゼロというのは許されない」などと追い打ちをかけ、金も奪った。
 ■逮捕きっかけは、被害女性の勇気ある被害届
 中西被告は同様の手口で、強姦や強制わいせつなどの暴行を24年9月までの約6年半に140回以上繰り返した。中には約2年にわたり二十数回の被害に遭った女性もいたという。また、手に入れた卒業アルバムの写真から好みの女子中学生に狙いを定め、電話番号を調べて犯行に及んだことも。捜査関係者も「ここまでやるとは…」と驚きを隠せず、「裁判では50年近い懲役刑が下されるのではないか」と、その罪の深さを語る。
 事件解決の端緒となったのは、府内の20代女性が24年6月、同署に被害を相談したことだった。中西被告は同年9月、この女性への強姦と恐喝容疑で逮捕された。
 強姦は、被害者本人が警察に届け出て初めて事件化される「親告罪」に該当する。性犯罪に遭った場合、警察への届け出だけでなく、医療機関での検査や被害者支援組織へのケア要請など、すべて被害者側が自ら動かなければならない。だが、各機関を訪れ、被害状況を繰り返し説明することは大きな精神的苦痛を伴うのだ。
 実際、今回の事件でも「警察に通報すれば自分だけでなく家族にも危険が及ぶ」と恐れたり、「婚約者がいるので過去の話を公にしたくない」として告訴に踏み切らなかった女性も少なくなかったという。被害者が27人に上りながら、結果的に警察が事件を認知するまでに約6年間を要した背景には、強姦事件ゆえのこうした難しさがある。
 ■言い出せない被害…「24時間態勢」の支援が力に
 被害から相談までの時間の経過は犯人逮捕だけでなく、被害者自身の救済も遅れることになる。
 例えば、妊娠を防ぐ緊急避妊薬。72時間以内に服用すれば効果がある一方、被害者の体内に残っている加害者のDNAは72時間程度で体外に自然排出され、立件に必要な証拠が失われてしまう。
 性犯罪の被害者支援に力を入れる産婦人科医、加藤治子さん(64)は「被害を受けたことを相談しやすい『駆け込み寺』が必要。相談してもらうことでご本人の体のケアができ、事件解決にもつながることがある」と話す。
 加藤さんは、大阪府松原市の阪南中央病院内にある「性暴力救援センター大阪」の代表を務める。ここは、性犯罪被害の相談や治療を24時間態勢で行う施設として、22年4月に日本で初めて開設された。医師や支援員が情報を共有するシステムのため、相談者は、何度も何度も被害状況を説明するという苦痛からは逃れられる。そして、警察に被害届を出すサポートも行っている。
 同センターの需要は拡大しているという。開設1年目の電話相談は1463件で、3年目には5325件と約3・5倍になった。被害に遭い、診察を受けた人も開設から3年間で計557人に上る。
 センター開設前、被害を訴えて同病院を訪れた女性は年間10人程度にとどまっていたことから、加藤さんは「深夜になって相談してこられる女性も非常に多い。24時間いつでも相談できる施設が必要とされているということ」と、センターが果たす役割の重要性を語る。
 今年4月には、同じく滋賀県草津市に性犯罪の被害相談を24時間受け付ける拠点がオープンするのをはじめ、性犯罪被害者の救援施設は全国で徐々に増えつつある。加藤さんは「一緒に寄り添える場所があることを知ってほしい」と訴える。
 強姦は「魂の殺人」といわれる。防犯や犯人検挙だけでなく、深い傷を負った被害者をどう守っていくのか、という視点も忘れてはならない。
http://news.livedoor.com/article/detail/8646870/
─情報元:産経新聞サイト様─