7月10日(ブルームバーグ):焼け付くような日差しがまぶしいある日の午後、サンジェイ・ゴープ君は天井の
低い泥壁の家の中で、ほこりっぽい中庭を這いずり回っていた。この家で家族10人と共に暮らしている。
猛暑で乾燥した牛ふんが積み上げられ、鶏たちが日陰で休んでいる。
祖父のデブナンダン・ゴープさんはサンジェイ君がもがくのを見やりながら暗い表情を浮かべている。
サンジェイ君の顔を汗が伝う。細い腕を交互に前に出しながら両足を引きずって進む。
地面には曲がりくねった跡が残っている。
インドの村々では住民の年齢ははっきりしない。サンジェイ君は10歳前後。
手足が不自由になる前は、正常によちよち歩きができる幼児だった。
今は、家族が手助けできない時は「ヘビのように地面を這い回っている」と、祖父は語る。
前兆はあった。姉のスニータさんも同じような症状に苦しんだ。手足がひどく変形したため、
自分で食事をしたり入浴したりすることができなくなり、2年前に13歳で死亡した。
サンジェイ君の家から道を一つ隔てた所で、同じ部族のラケシュ・ゴープ君が、祖父が眠っている屋外の
トタン屋根の土間で座っている。薄茶色の目をしたきゃしゃなこの少年は両手を振ろうとするが、
その手はけいれんし宙を泳いでいる。10歳のこの少年も一人で歩くことができない。
周辺の村々にこのような子供たちが何人いるのか、正確に知る者は誰もいない。
ただ、あちこちで見掛けるということだけは事実だ。
衝撃
サンジェイ君とラケシュ君はニューデリーから約1370キロメートル離れたインド東部ジャルカンド州にある
人口約1万9500人の町ジャドゥゴダの近くに住んでいる。
田園風景が広がるこの地域は、空前の原子力発電ブームを支える燃料、ウランのインドの採掘拠点。
この場所が現代インドが抱える深刻な問題を浮き彫りにしている。
ここでは、インド・ウラン公社が政府から鉱業権を付与され、毎年、数十万トンのウラン鉱石を採掘している。
すぐそばの丘の向こうにある総面積193エーカーの複数の池には、低レベル放射性廃棄物が放置されている。
村から歩いてすぐの場所にあり、立ち入り禁止の標識もほとんど設置されていない。
鉱山近辺に点在する村々に住む貧しい人々は何年もの間、ある謎に苦しめられてきた。
それはこれほど多くの子供たちに奇形や死を引き起こす病気の原因は何なのかという謎だ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/data?pid=avimage&iid=i.Dss2y48.Ec
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N8FMFJ6K50Y201.html
サンジェイ君の祖父のデブナンダンさん(70)はここに住む多くの人々が目にした事実を話した。
それは、鉱山の操業が始まる前は、子供たちが地面を這い回り、死亡するようなことはなかったという事実だ。
以前ならこのような証言は、少年が抱える障害や少女の死を嘆き悲しむ無教養な親類の言葉として、
取り合ってもらえなかったかもしれない。ジャルカンド州高裁や環境保護団体など外部の人々が
デブナンダンさんの見方が正しいかもしれないと示唆するまでは。
州都ランチーにある州高裁は2月に、インド・ウラン公社が1967年から操業している鉱山が原因であることを
示唆した文書を提出。高裁は、この地域の病気を患ったり体が変形したりした子供たちの写真を国内メディアの
報道で目にして衝撃を受け、同社と関連政府機関に対し、鉱山周辺の村々の人々の健康を守るために
どのような対策を講じているか説明するよう命じた。
責任を否定
高裁の文書は「ウラン採掘に関連する健康問題は、ウラン採掘現場とその周辺の先住民族に偏って見られ、
大きな影響を及ぼしている」と指摘。最大5万人が「リスクにさらされている」としている。
さらに、鉱山近辺に住んでいる子供たちについて「頭部肥大や血液疾患、骨奇形を伴って生まれている。
ウラン採掘現場周辺の村々ではがんが死因となるケースが多い」と指摘している。
懸念を表明しているのは高裁だけではない。2007年にはインドの医師団体が発表した調査結果で、
鉱山近くの村民の先天奇形とそれによって死亡する比率が20マイル(約32.2キロメートル)離れた場所の
住民と比較してかなり高いことが示された。
08年には、地元団体のジャルカンド放射線反対機構がジャドゥゴダ地区の井戸や小川10地点から水のサンプルを採取。
7地点でウラン採掘の副産物である鉛のほか、水銀などの危険水準の重金属が検出された。
裁判所の命令に対し、インド・ウラン公社と政府機関は3月と4月に337ページに及ぶ供述書と関連書類を提出した。
ブルームバーグ・ニュースは未公表のこれらの書類を入手。
...2ちゃんねるの反応はこちら >>
低い泥壁の家の中で、ほこりっぽい中庭を這いずり回っていた。この家で家族10人と共に暮らしている。
猛暑で乾燥した牛ふんが積み上げられ、鶏たちが日陰で休んでいる。
祖父のデブナンダン・ゴープさんはサンジェイ君がもがくのを見やりながら暗い表情を浮かべている。
サンジェイ君の顔を汗が伝う。細い腕を交互に前に出しながら両足を引きずって進む。
地面には曲がりくねった跡が残っている。
インドの村々では住民の年齢ははっきりしない。サンジェイ君は10歳前後。
手足が不自由になる前は、正常によちよち歩きができる幼児だった。
今は、家族が手助けできない時は「ヘビのように地面を這い回っている」と、祖父は語る。
前兆はあった。姉のスニータさんも同じような症状に苦しんだ。手足がひどく変形したため、
自分で食事をしたり入浴したりすることができなくなり、2年前に13歳で死亡した。
サンジェイ君の家から道を一つ隔てた所で、同じ部族のラケシュ・ゴープ君が、祖父が眠っている屋外の
トタン屋根の土間で座っている。薄茶色の目をしたきゃしゃなこの少年は両手を振ろうとするが、
その手はけいれんし宙を泳いでいる。10歳のこの少年も一人で歩くことができない。
周辺の村々にこのような子供たちが何人いるのか、正確に知る者は誰もいない。
ただ、あちこちで見掛けるということだけは事実だ。
衝撃
サンジェイ君とラケシュ君はニューデリーから約1370キロメートル離れたインド東部ジャルカンド州にある
人口約1万9500人の町ジャドゥゴダの近くに住んでいる。
田園風景が広がるこの地域は、空前の原子力発電ブームを支える燃料、ウランのインドの採掘拠点。
この場所が現代インドが抱える深刻な問題を浮き彫りにしている。
ここでは、インド・ウラン公社が政府から鉱業権を付与され、毎年、数十万トンのウラン鉱石を採掘している。
すぐそばの丘の向こうにある総面積193エーカーの複数の池には、低レベル放射性廃棄物が放置されている。
村から歩いてすぐの場所にあり、立ち入り禁止の標識もほとんど設置されていない。
鉱山近辺に点在する村々に住む貧しい人々は何年もの間、ある謎に苦しめられてきた。
それはこれほど多くの子供たちに奇形や死を引き起こす病気の原因は何なのかという謎だ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/data?pid=avimage&iid=i.Dss2y48.Ec
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N8FMFJ6K50Y201.html
サンジェイ君の祖父のデブナンダンさん(70)はここに住む多くの人々が目にした事実を話した。
それは、鉱山の操業が始まる前は、子供たちが地面を這い回り、死亡するようなことはなかったという事実だ。
以前ならこのような証言は、少年が抱える障害や少女の死を嘆き悲しむ無教養な親類の言葉として、
取り合ってもらえなかったかもしれない。ジャルカンド州高裁や環境保護団体など外部の人々が
デブナンダンさんの見方が正しいかもしれないと示唆するまでは。
州都ランチーにある州高裁は2月に、インド・ウラン公社が1967年から操業している鉱山が原因であることを
示唆した文書を提出。高裁は、この地域の病気を患ったり体が変形したりした子供たちの写真を国内メディアの
報道で目にして衝撃を受け、同社と関連政府機関に対し、鉱山周辺の村々の人々の健康を守るために
どのような対策を講じているか説明するよう命じた。
責任を否定
高裁の文書は「ウラン採掘に関連する健康問題は、ウラン採掘現場とその周辺の先住民族に偏って見られ、
大きな影響を及ぼしている」と指摘。最大5万人が「リスクにさらされている」としている。
さらに、鉱山近辺に住んでいる子供たちについて「頭部肥大や血液疾患、骨奇形を伴って生まれている。
ウラン採掘現場周辺の村々ではがんが死因となるケースが多い」と指摘している。
懸念を表明しているのは高裁だけではない。2007年にはインドの医師団体が発表した調査結果で、
鉱山近くの村民の先天奇形とそれによって死亡する比率が20マイル(約32.2キロメートル)離れた場所の
住民と比較してかなり高いことが示された。
08年には、地元団体のジャルカンド放射線反対機構がジャドゥゴダ地区の井戸や小川10地点から水のサンプルを採取。
7地点でウラン採掘の副産物である鉛のほか、水銀などの危険水準の重金属が検出された。
裁判所の命令に対し、インド・ウラン公社と政府機関は3月と4月に337ページに及ぶ供述書と関連書類を提出した。
ブルームバーグ・ニュースは未公表のこれらの書類を入手。
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