2015年2月27日金曜日

創業139年、エリクソンはなぜモバイル業界で生き残れるのか

 スウェーデンのEricsson(エリクソン)という名に、どんなイメージがあるだろうか。日本では、「ソニー・エリクソンの親会社だったモバイルインフラベンダー」というイメージが強いかもしれないが、現在エリクソンは一切携帯電話端末を作っていない。しかし今のエリクソンは、世界のモバイルトラフィックの4割が何らかの同社のネットワーク機器を利用しているというほど、モバイル通信業界において、重要な存在である。
 端末事業を完全に捨てた同社はいま、モバイルとクラウドが中心の時代に向けて、足元を強化している。エリクソン本社を訪問する機会があったので、そのときの取材を元に、本記事では創業138年の同社の生き残り戦略を探る。隣国のフィンランドのライバル、Nokia(ノキア)と対比しながら、エリクソンの強さの秘密を考えたい。
ay_eri01.jpgエリクソン本社

モバイル黎明期から普及期――端末の重要性を見誤ったエリクソン

 私たちは日々、手元にあるスマートフォンで、重要なメッセージを当たり前のようにいつでもどこでも即時に受け取ることができる。これは、3Gや、さらに高速なLTEなどのモバイルネットワークが世界中を覆っているおかげだが、エリクソンは、このモバイルネットワークを可能にしている基地局や、コアネットワークなどの無線インフラ分野で世界最大手のベンダーだ。無線アクセス機器、テレコムサービスなど主要分野でトップ、5Gなど次世代の無線技術の開発という点でも重要な存在である。

1980年代 固定電話からモバイルへ

ay_eri02.jpgエリクソンのGSM端末
 1980年代に、いち早くスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの北欧諸国が中心となって開発したアナログ無線規格「Nordic Radio & Telecommunication(NRT)」により、北欧はモバイル分野で先駆けることができた。エリクソンはその中の一社であり、そしてもう一社が隣国フィンランドのノキアだ。
 エリクソンとノキアは、インフラ機器と端末の両方を開発すると同時に、2G、3Gとモバイル規格の仕様を標準化して普及させることで規模のメリットを生むというビジネスモデルを構築し、標準化作業で主導的な立場を握るようになった。標準化の結果として端末の価格は下がり、世界のどこでも同じ電話が利用できるという、GSMの成功につながった。
 だがエリクソンとノキアはそれぞれの歴史を経てモバイルに入ってきた企業であり、モバイルが黎明期から普及期に入った後の戦略も異なる。かつてノキアがゴムメーカーとして長靴を作っていたという話はよく知られているが、エリクソンは古くから「テレコム」で一貫している。
 エリクソンの始まりは、1876年に電話の製造や修理を行っていたスウェーデン人のラース・エリクソン(Lars Magnus Ericsson)が設立したことにさかのぼる。これはちょうど北米で、グラハム・ベルが電話の特許を申請した年だ。その後、エリクソンは固定から無線通信と携帯電話へフォーカスを移していった。一方のノキアは創業者の名前ではなく、地名を社名としている。そのためなのか、ノキアの事業は一貫しておらず、ゴムやパルプなどを手がけた後に進出した電子分野でも、テレビやPCなどを手がけていた時期もあった。
 80年~90年代にかけて、2社はモバイルに主軸を移す。そして1990年代後半、モバイルが黎明期を脱して普及し始めるが、これまでインフラの延長線に位置づけられていた端末の重要性が増しはじめる。エリクソンはここで遅れをとった。ノキアは、アンテナのない機種など、当時の欧州で技術革新をリードした。同時に世界に製造拠点を構築し、優れたサプライチェーンとディストリビューションモデルを構築したのだ。こうして、ノキアは頑丈でデザイン性のある携帯電話で世界を制する足場を築く。端末事業から見た両者の明暗が分かれ始めたところで、エリクソンがとった策が携帯端末部門でのソニーとの提携だった。
 「携帯電話にコンシューマー家電の要素が求められるようになった。ここはエリクソンの強みではないので、ここを得意とするソニーと組むことが適確と判断した」と、エリクソンの関係者は当時を振り返る。それから10年、2012年に提携を解消するまで、ソニーと50%ずつ出資したソニー・エリクソンは、「Walkman」「Cyber-Shot」などのソニーブランドを生かした端末を作り、「Xperia」でAndroidを採用したハイエンドラインを揃えた。この合弁事業はに利益をもたらしており、「成功」と位置づけられているようだ。

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─情報元:Business Media 誠サイト様─