駅の待合室で座っている外国人のお兄さん。大きなリュックを抱えているので、おそらく旅行に来ている人なのだろうが、少し様子がおかしい。
見ると、手にはセブソイレブソのオニギリ(シャケ)。そのオニギリをくるくると回して色々な方向から見たり、ラベルにじっと顔を近付けて懸命に
注意書きを読もうとしている外国人。どうやら開け方が分からないらしい。
開け方を教えようか迷っていたら、突然「ん」と小さな声が聞こえた。声の主は外国人の隣に座っていた、日本人のちっちゃなおじいちゃんだった。
おじいちゃんは自分を指差し、オニギリを指差し、外国人の目をじっと見て、「ん」ともう一度言った。
「俺が開け方を教えてやる」というジェスチャーらしい。
外国人はおじいちゃんを見、オニギリを見、少し迷ってからオニギリをおじいちゃんに渡した。おじいちゃんはそれをまた「ん」と呟いて受けとる。
おじいちゃんはまず、オニギリの真ん中のビニール(①と書いてある)を縦に途中まで裂き、「ん?」と外国人に確認した。こくこくと頷く外国人。
次におじいちゃんはオニギリの両端(②と③)を持って横にくいくいと引っ張るジェスチャーをし、また
「ん?」
と確認。こくこくこくこくとさらに頷く外国人。真剣な顔が可愛い。
おじいちゃんは外国人が頷くのを確認すると、そこからはちょっともったいぶって、ズッズッとゆっくりビニールをずらしていく。
「オゥ……オォゥ…オゥ…」
ビニールの動くのに合わせて小さく歓声をあげる外国人。
「んふ……んふふ…ふふ」
そんな外国人のリアクションが嬉しくて、自然と笑みのこぼれるおじいちゃん。
そしてついに
バリリッッッ
「オオオオオオオオッ」
まっ二つに裂けるオニギリビニール。
ひときわ大きな歓声をあげる外国人。
おじいちゃん、そんな外国人に満面の笑顔、ニコーッ。
「アーッハハァー!ヒョウ!」
オニギリが裂けたのが嬉しくて仕方の無い外国人。何故かおじいちゃんの肩や腕をベタベタベタベタと触りまくる。
「んっふふ、んふふふふふ」
クシャクシャの笑顔で、触ってくる外国人を肘でつんつんつんつんつっつき返すおじいちゃん。本当に幸せそう。
その日一日、俺もずっと笑顔だった。
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