2012年3月17日土曜日

返せと言われても所有者であるわけじゃないし


 東京電力本社(東京都千代田区)では、市民団体のメンバーらが全原発の廃炉や避難者への十分な賠償を改めて訴えた。  本社前には、インターネットでの呼び掛けに応じた50人ほどが参集。「ふくしまを返せ」などと書かれた横断幕を掲げた。参加者の1人が「すべての避難者に賠償しろ」と訴えると、大きな拍手が上がった。
福島が「ふくしま」とひらがなで書かれているのは何でなのでしょうね。福島を「フクシマ」とカタカナ書きにする嫌らしさについては指摘する人もいたものですが、平仮名で書かれると何だか政治家の名前みたいで間が抜けた印象です。それはさておき、参加者の1人が「すべての避難者に賠償しろ」と訴えると、大きな拍手が上がったそうです。避難指示対象区域は元より原発に距離の近い福島の23市町村までは全住民が賠償対象に含まれているはずですが、その辺の実態には関心がない人の集まりなのかも知れません。あるいは、東京とか神奈川とか、どうでもいい地域から思い込みで避難した人に賠償しろとでも言いたいのでしょうか。その手の人って、むしろ被害者であるより加害者として振る舞うことの方が多いのではないかと思うのですけれど(参考)。

大手銀3行、東電融資を了承=原発再稼働など収支改善条件(時事通信)

原子力損害賠償支援機構が大手金融機関に要請した東京電力への総額1兆700億円の追加融資について、三井住友銀行などメガバンク3行は条件付きで応じる方針を5日までに固めた。電気料金の引き上げや、原発の一部稼働再開などで確実に収支を改善させることを条件とし、機構が設定した回答期限の7日までに正式に伝える。
結局のところ民間企業である金融機関が融資の是非を判断する以上、収支改善の見込みがあるかどうかは当然ながら問われます。このまま火力発電所をフル稼働させて赤字を続けるのであれば、銀行も二の足を踏むわけです。そこで原発停止や廃炉を訴える人が勝手だなと思えるのは、それにともなう負担を他人事としか考えていないように見える点です。全原発停止なら電力不足に伴い産業も市民生活も大きなリスクを負いますし、電力会社は大赤字が続くこと必至です。だからといって「発電すればするほど損になるだけなので、もう廃業します」とケツをまくるわけにも行きません。そうなると、誰かが赤字を埋めなければならなくなります。原発再稼働や値上げで収支改善の見込みがあるなら、民間の金融機関が動くでしょう。しかし、原発が使えない、値上げもできないとなれば赤字からの回復は見込めない、銀行も慈善事業ではないですから、融資するわけにもいかなくなります。そうなってしまえば税金で穴埋めするほかありませんが、公的資金の投入に反対している人はしばしば、原発の再稼働にも電気料金の引き上げにも反対してはいないでしょうか。それは両立し得ない、原発に反対するなら、それに伴うコストは自らが負わねばならないことを意識してもらいたいものです。それができないなら、単に電力会社憎しで我儘を言っているだけと変わりません。

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