◆チタン鉱石から抽出野積みの「フェロシルト」
’05年11月。愛知県瀬戸市下半田川町の住民は驚いた。雨のあと、川が突然真っ赤に流れ出したからだ。「犯人」は、源流が流れる谷間を埋め尽くした「フェロシルト」という赤茶けた汚泥状の物体だ。作ったのは、酸化チタン製造トップメーカーの石原産業(大阪市)。
酸化チタンは、冷蔵庫や洗濯機などの「白物」に欠かせない顔料の原料だ。チタン鉱石から硫酸を使いチタンを抽出すると、最終処分場行きの膨大な産廃が排出される。石原産業はこれを化学処理し、造成工事の路盤材などに利用する「リサイクル商品」として’02年から「フェロシルト」との名称で愛知県や岐阜県、三重県などの東海地方で販売を始めていた。
ところが、その販売の実態は、「保管」と称しての不法投棄そのもの。東海各県の谷にフェロシルトの山が野積みされたのだ。
チタン鉱石にはもともと、ウランやトリウムなどの放射性物質が含まれている。そこで、市民団体が調査してみると、フェロシルトにもそれらの含有が明らかになった。しかし、石原産業も行政も「放射線値は国の基準以内」として根本的対処をしなかった。
この見解に異を唱えたのが、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏。小出氏は、愛知県のフェロシルトが積まれた現場から下半田川町までの川を2~3km歩き、調査した10か所すべてで川砂からトリウムを検出した。
「トリウムの半減期は140億年、汚染は永遠にその土地に留まる」
事態が急転したのは’06年6月。野積みされたフェロシルトから、環境基準の15倍もの六価クロムが検出されるに至り、ようやく行政も腰を上げ、石原産業は72万tの全量撤去に追い込まれた。
小出氏はこう語る。
「本来、産廃処分場に行かねばならないチタン鉱石の膨大なクズの始末に困った企業が、『リサイクル商品』として売ることで産廃に対する管理の手抜きをした。始末できない廃物、放射性物質が生じる行為自体をやめるべき」
http://news.livedoor.com/article/detail/6986650/
─情報元:日刊SPA!サイト様─