突然のブーム襲来である。今、日本の音楽業界では「定額配信」が注目の的だ。
定額配信とは、毎月一定金額を支払うことで音楽が聴き放題になるサービス。海外では人気のサービスだが、日本では普及してこなかった。1曲ごとのダウンロード(DL)販売やCD販売へのマイナス影響を懸念するレコード会社が楽曲提供に消極的だったため、ヒット曲の品ぞろえなどに難があった。
が、ここに来て大手レコード会社が本腰を入れ始めたことで、次々とサービスが立ち上がっている。
■着うた急減が背中押す
2012年、レコード会社を取り巻く環境は久々に明るかった。年間のCDなど生産額は山下達郎、ユーミンのベスト盤効果で、14年ぶりに下げ止まり、前年比8%増の2277億円になった。10月には「違法ダウンロードの刑事罰化」という業界が待望していた法制も整った。
とはいえ、CDなどの生産額は1998年の6074億円に比べると4割弱でしかない。「着うた」など携帯電話(ガラケー)向けDL販売も、スマートフォンの普及が加速する中、08年の798億円をピークに12年は347億円まで縮小してしまった。
「着うた」では、主要レコード会社が出資するレコチョクが圧倒的なシェアを誇り、各社の収益源になってきた。それだけに、スマホでも早急に新事業を確立する必要があった。もっとも、スマホ向けDL販売でアップルなどの牙城は強力。そこで、お得感のある定額配信へ積極姿勢に転じたわけだ。
3月上旬までにレコチョクは比較的高い音質を実現したスマホ向け定額配信「レコチョク・ベスト」を開始。100万曲以上を用意してスタートダッシュをかける。
実は、大手レコード会社が持つメジャーな楽曲を合わせても「100万曲」に達しない。レコチョクが頼る会社の一つがスペースシャワーネットワーク。同社は米国やオーストラリアなど、約700万曲のインディーズ系音楽の日本での配信権を持っている。現在は25万曲を提供済みで、さらに「毎日5000曲のペースで楽曲を増やすことが可能」(スペースシャワーの福岡智彦常務執行役員)という。
インディーズの楽曲にどこまで需要があるかは不明だが、宣伝文句として楽曲数のアピール力は無視できない。レコチョクは「早期の2000万曲実現」(関係者)を目指している。ライバル視しているのは、先行しているソニーの「ミュージック・アンリミテッド」だ。
ソニーは10年末に英国、アイルランドで定額制をスタート。現在17カ国をカバーしている。日本では昨年7月に開始。邦楽7万曲を含む1300万曲以上がそろう。「テレビ、モバイル、プレステなどさまざまなデバイスで再生できるのがソニーのサービスの強みだ」(ソニー・ネットワークエンタテインメント部門の大澤雄人・ビジネス企画課長)。
一方、携帯電話各社はレコチョクと組み、少し前から低価格の定額制に踏み出している。
NTTドコモは12年7月に「dヒッツ」を開始。月額315円の低価格で毎月2000曲以上を聴くことができる。ただし、10曲程度をまとめたプレイリストで再生するため、ラジオに近い。「音楽番組の減少などでユーザーが音楽に接する機会は減っている。気軽に利用してもらい、サービスの裾野を広げていきたい」(NTTドコモ・ネットサービス企画担当部長の前田義晃氏)。気に入った曲があれば、ドコモが運営する「dミュージック」からDL購入してもらうことも狙っている。
2011年6月から月額1480円(3月から980円)の「リスモ・アンリミテッド」を展開するKDDIも、12年6月に月額315円でラジオ型の「うたパス」を開始した。
ソフトバンクは2月にエイベックスとの合弁事業「UULA」を始めた。月額490円で、音楽はミュージックビデオで提供、映画やドラマ、カラオケも楽しめる。
今春にはDeNAの新事業「グルービー」もお目見えする。音楽はDL販売が主体だが、定額の要素も組み合わせる予定。モバゲーで4000万人の会員基盤を持つだけに、レコード会社からの期待が大きい。
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http://news.livedoor.com/article/detail/7462411/
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─