1990年代後半に崩れ始めたとされる、日本の大企業における年功序列の給与体系。リーマンンショックや大震災を経て、その解体はさらに加速している。かつて多くの日本企業では、正社員であれば定期昇給とベースアップで毎年着実に給与が上がった。これが完全に過去のものとなりつつある(図1)。
春闘では安倍晋三首相からの異例の要請もあり、「賃上げ相次ぐ」と報じられたが、その中身を見ると一時金での対応ばかりで、本来的な賃上げであるベアの獲得はごく少数だった。「賞与の満額回答なんて(労働組合員への)『お布施』みたいなもの。退職金や残業代の底上げにもならない。ベア獲得こそが『賃上げ』だ(図2)」と日本賃金研究センターの藤田征夫主席コンサルタントは語る。
だが現実には、日本の平均賃金は10年以上にわたって下落している(図3)。ベアはおろか定昇すらままならないのが日本企業の現状だ。
■満額回答は「お布施」 増える寸志程度の賞与
日本生産性本部が上場企業を対象に行った調査によれば、定昇制度で定年まで基本給が増えるのは少数派で、全体の2割にも満たない(図4)。定昇制度がある場合でも、平均して50歳前には定昇が止まる。早いところは27歳時だ。約4割の上場企業ではそもそも定昇制度がない。
■賞与と呼ぶにはあまりに小額……
賞与・一時金に至ってはさらに衝撃的な分析結果がある。「厚生年金事業年報」によれば、男性社員の10人に4人が賞与ゼロか年合計30万円以下だ(図5)。このデータを分析した北見式賃金研究所の北見昌朗所長は、30万円以下の賞与を「寸志程度」と表現する。賞与と呼ぶにはあまりにも少額すぎるというわけだ。「賞与額が年30万~90万円の中間層だった男性社員が、年30万円以下の寸志程度に転落した」(北見所長)。
女性社員に目を転じるとさらに厳しい。ほぼ3分の1が賞与ゼロ。2003年度と11年度を比べると、賞与ゼロの女性が激増する一方、男性とは逆に寸志程度が減っている。
北見所長によれば、これらの数字の変化からある夫婦像が浮かび上がる。リストラや倒産で夫が正社員から非正規に転落。年収激減を受けて、妻が派遣として働きに出る。派遣なので妻の賞与はゼロ、契約社員やパートになった夫の賞与は寸志程度。「そんなワーキングプア夫婦が増えているのではないか」(北見所長)。
一方で年200万円以上の賞与を受け取る男性社員の割合は、03年度と11年度との間で変化はない。一時金だけを見ても、給与格差は明らかに拡大しつつあるようだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/7551947/
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─