2014年4月7日月曜日

従業員は路頭に…国会成立が迫る中小企業「廃業促進」法案

■経営者の債務責任緩和で「廃業」促す

 消費税アップで中小零細企業の多くが「価格転嫁できない」と嘆く中、苦境に立つ企業の「廃業」を加速させる法案が成立間近だ。

 今国会で審議中の官民ファンド「地域経済活性化支援機構」の法改正案には、経営者の債務責任を緩めて廃業を促す内容が盛り込まれている。

 中小企業の経営者にとって最大のリスクは、融資の8割に付く「経営者保証」だ。債務超過に陥れば、自宅など私財をすべて回収され、金融機関の「ブラックリスト」に載って新たな借り入れもできなくなる。クレジットカードすら作れないのが実態だ。

「そのリスクを回避しようと、経営者個人が赤字の穴埋めに借金を重ねても結局、本業の収益力が回復せず、ズルズルと債務超過に転落するケースも多い。これでは貸し手の銀行も債権回収が困難となります。そんな最悪の事態を防ぐため、経営者の重荷を取り除くのが、法改正の趣旨です」(内閣府の地域経済活性化支援機構担当室)


 具体的には支援機構が銀行の債権を買い取って経営難の借り手企業に事業再生、転業、休廃業といった選択を迫る。廃業しても経営者の手元に最大460万円を残し、担保に入れた自宅もムダに豪華でなければ差し押さえない。

 前出の担当室は「こうして転廃業を促し、経営者の“再チャレンジ”を支援する」と言うが、経営者の生活は保障されても従業員は路頭に迷うハメになる。

 ただでさえ、「隠れ倒産」と呼ばれる休廃業件数はうなぎ上りだ。東京商工リサーチの調査によると、昨年の休廃業・解散企業数は過去10年で最悪となる2万8943件を記録。倒産件数の実に2.6倍に達した。

 事業継続を断念する理由の大半は、業績ジリ貧と後継者難だ。年老いた経営者が「息子たちに借金が残らないなら」と、会社をたたむケースも多い。実態は「再チャレンジ」とかけ離れており、手元にある程度のカネと自宅が残るのなら、廃業を決断する経営者はますます増えるだろう。


「廃業企業を“勝ち組企業”が手に入れたり、マンション向けに転売するケースも相次ぐでしょう。それが恐らく安倍政権の狙いで、雇用や土地資産などの流動化を促す経済政策と合致します。中小企業の土地資産をいったん“焼け野原”のようにして、有力企業に新たな資産価値を生み出させ、経済成長のバネにする。そのためには中小企業の社員の暮らしは犠牲にしても構わない。そんな考えが透けて見えます」(経済ジャーナリスト・山本伸氏)

 焦土からの経済成長を夢想するとは、安倍のアナクロ思想を象徴するような法案である。



http://gendai.net/articles/view/news/149146
─情報元:日刊ゲンダイサイト様─