暴言や執拗な叱責はパワハラになる
これは、かつてセクハラが大きな社会問題になり始めた頃、女性社員を部下に持つ男性上司が「仕事上の失敗を怒っても『セクハラです!』って言われる」と、女性社員を叱れずに悩んでいたのと一緒です。ミスした社員を叱るのは上司や社長さんの職務ですから、もちろん叱ってもパワハラにはなりません。
もっとも、「給料泥棒!」「辞めちまえ!」など、部下の社員がストレスを感じるような暴言や執拗な叱責はパワハラとされ、社長さんや会社は社員側から損害賠償を請求されることもあります。実際、会社側に支払いを命じた裁判例も珍しくありません。
最近では、19歳の新入社員がパワハラにより自殺したとして、その遺族が会社と上司に計1億1,000万円の損害賠償を求めた事件の判決が報道されました(※1)。
この事件は、高卒後に消火器販売会社に入社した男性が、上司から「ウソを平気でつく」「死ねばいい」「会社を辞めろ」などと繰り返し言われ、その結果、うつ状態に陥って自宅で首つり自殺したため、男性社員の父親が「パワハラで自殺した」と訴えたものです。
裁判所は、「上司は人格を否定する言動を繰り返し、未成年の新入社員に精神障害を発症させた」と指摘し、「上司の言動は指導の域を超えており、典型的なパワハラだ」として、自殺との因果関係も認め、会社側に計約7,200万円を支払うよう命じました(福井地裁・平成26年11月28日判決)。
なお報道によると、福井労働基準監督署も男性社員の自殺の原因をパワハラと認め、労災自殺と認定したそうです。
叱りすぎたと思ったらすぐにフォローを
もちろん、パワハラは絶対にいけません。ただ、仕事上でミスをした社員を叱ることは、社長さんや上司にとって職務です。社員や部下が、うつ病などの精神疾患を発症するような強いストレスを与える言動でなければ、他の社員の前で叱ることも許されるでしょう。社長さんや上司が委縮することはないのです。
では、どんな言動がパワハラになるのかというと、次のような言動が上げられます。
1. 「給料泥棒!」「仕事ができない!」「死んでしまえ!」などと暴言を吐く
2. 仕事上のミスを長時間執拗に責めたり、また他の社員などの前で大声で叱責する
3. その社員が自分の意に沿う発言をするまで大声で怒鳴りつける
4. 何の根拠もなく、その社員を無能と決め付ける
5. 社員に実現不可能な業務を強要したり、その能力に応じた業務を与えない
6. 不必要な休日出勤や残業を命じる
7. 業務と無関係な私用を命じたり、社員の私生活に執拗に干渉する
8. 1~7の言動に抵抗拒絶する社員にはペナルティーをちらつかせる など
2. 仕事上のミスを長時間執拗に責めたり、また他の社員などの前で大声で叱責する
3. その社員が自分の意に沿う発言をするまで大声で怒鳴りつける
4. 何の根拠もなく、その社員を無能と決め付ける
5. 社員に実現不可能な業務を強要したり、その能力に応じた業務を与えない
6. 不必要な休日出勤や残業を命じる
7. 業務と無関係な私用を命じたり、社員の私生活に執拗に干渉する
8. 1~7の言動に抵抗拒絶する社員にはペナルティーをちらつかせる など
もっとも、この言動すべてがパワハラになるわけではありません。例えば、社長さんの厳しい叱責をストレスと感じるかどうかは、個人差があるでしょう。それがパワハラになるほど強いストレスかどうかは、平均的社員の感じ方を基準にするしかありません。また、社員のミスによる損害や損失の大小によってもパワハラになる場合とならない場合があると思います。労災判定などでは、これらの言動が行われた時点の状況などを総合的に勘案して判断するようです。
一般的には、いわゆる暴言や他の社員の前で大声で執拗に叱責する行為は、パワハラになると思ってください。少なくとも、感情に任せて激怒するような叱責はしない方がいいでしょう。とはいえ、「パワハラ!」と言われるのを恐れて社長さんや上司が委縮し、ミスした社員やダメ社員を叱らずに放っておくと社員の緊張感が失せ、社内の規律が乱れます。その結果、ときには会社の存続にかかわるような大きなミスも起こり得るのです。社長さんとしては、叱るべきときは叱り、ミスした社員には必要な処分を下すといいでしょう。
ただし、感情に任せて暴言を吐いたり叱りすぎたと思った場合は、そのまま放置せず、相手社員に謝るなど一定のフォローを忘れないことです。キチンとフォローさえすれば、パワハラ騒ぎなど起こりませんし、その社員が精神障害を発症することも防げます。
なお厚生労働省の通達では、社員に発症した精神障害が業務上によるものかどうかを判定する指針として「心理的負荷評価表」を提供しています。ご自分の言動がパワハラかどうか心配だという社長さんは、それを使って判定してみるのもいいでしょう(※2)。
...詳しい情報・続きはこちら >>
http://www.nikkeibp.co.jp/article/miraigaku/20141210/427626/
─情報元:小さな組織の未来学サイト様─