2016年10月25日火曜日

星野リゾートを成長に導いた「ピンチはチャンス」の王道哲学

2016年7月20日、大手町に日本旅館「星のや東京」が開業しました。星野リゾートの新たな挑戦である、都市に建てられた温泉旅館は、大きな話題を呼びました。1991年に4代目社長として星野リゾートを引き継いだ星野佳路さんは、運営事業への特化、旅館再生事業への着手、観光に特化した不動産投資信託の立ち上げなど、斬新な取り組みによって星野リゾートを進化させてきました。変革者である星野さんは、何を基準に変えるべきものと残すべきものを決めてきたのでしょうか。


何を変え、何を残すか?
市場を見れば向かうべきところがわかる

星野佳路(ほしの・よしはる)
1960年生まれ。長野県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、1986年米国コーネル大学ホテル経営大学院にて経営学修士号を取得。91年1月、星野リゾートの前身である星野温泉の社長に就任。以来「リゾート運営の達人になる」というビジョンを掲げ、圧倒的非日常感を追求した滞在型リゾート「星のや」をはじめ、全国で宿泊施設、スノーリゾートを展開している。
武田 星野リゾートさんは、最初の旅館を開業してから102年という歴史をもっています。この長い歴史のなかで、変わらない部分もあれば、積極的に変えてきた部分もあるでしょう。そのことを考えたとき、元国立劇場演出室長の木戸敏郎先生が本連載の対談で教えてくださった「ポイエティック」という方法論を思い出しました。それは、ある物事からコンセプトだけを抜き出し、新しいパラダイムで再解釈・再構築するということです。古典芸能から本質のみを抽出し、現代に合わせてかたちを変えて残していく。それが「伝統」となっていきます。しかし、この手法は単純ではなく、それ相応の覚悟も必要になります。星野リゾートさんでは、どのように変えるべきところと残すべきところを見極めているのか、お聞かせください。
星野 市場の変化を注視していると、変えなければいけないことは自然にわかります。例えば、旅行市場、旅行客の行動は、時代とともに大きく変化してきました。高度経済成長の時代、旅行というものが一般的に広まり、団体・グループでの国内旅行が一大ブームになります。それがだんだん個人旅行に代わり、さらに個人で海外旅行をするようになりました。海外に行き、世界の一流を知った日本人の個人旅行者は、旅行に対する感覚が洗練されていきました。一方、日本の温泉旅館はというと……。
武田 今でも、1980年代からあまり変わっていないところがありますよね。そう考えると、旅行者側の変化に対応できていないように見えます。
星野 団体旅行の時の形式を急に変えることが難しく残ってしまっている。大きな宴会場の稼働低下などがその事例です。
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http://diamond.jp/articles/-/104406
─情報元:ダイヤモンド・オンラインサイト様─