水害リスクを“見える化”せよ
タイで起きている洪水は、各地に大きな被害をもたらしただけでなく、アユタヤ周辺の工業団地を水没させたことで、日本企業の生産活動に打撃を与えた。首都バンコクでも、中心部を流れるチャオプラヤ川が一部で氾濫し、じわじわと浸水域が広がっている。
なぜ今回の洪水は、これほどまで規模が拡大しながら、長期にわたって続いているのか。グローバル化が進む中、企業はこうした海外の災害リスクとどう向き合うべきなのか。
タイで現地の研究者たちと共同研究を続けてきた東京大学生産技術研究所の中村晋一郎特任助教に聞いた。
現在、タイで起きている洪水の直接的な原因は、6月から9月にかけて続いた記録的な大雨だ。この期間のタイ国内の雨量は平年より3~4割多かった。また、10月に入っても雨は降り続いた。
こうした降雨の規模は「50年に1度」のレベルとも言われているが、もっと大きな規模である可能性が高い。大雨の原因としては、太平洋東部の赤道付近で海水温が低下するラニーニャ現象の影響が考えられる。
洪水の原因を探るうえでは、ダムの運用の仕方にも目を向ける必要がある。タイの季節は雨期と乾期に分かれ、6月から9月にかけては雨期に当たる。この時期、チャオプラヤ川上流域のダム群ではどんどん水をため込んでいく。雨が降らなくなる乾期の農業に備えるためだ。
ただ、雨期全体の降水量を正確に予測するのは難しいため、ため始めるタイミングが早いと、ダムはいっぱいになり、放流せざるをえなくなる。タイでは2006年にも洪水が起きているが、今回、チャオプラヤ川上流域のダム群では、2006年の時よりも早い9月前半の段階で貯水量がピークに達し、次々と放流を始めた。
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─情報元:日経ビジネスオンラインサイト様─