2013年2月22日金曜日

若者たちを食いつぶす「ブラック企業」の悪辣な姿


 少し前に小林多喜二の『蟹工船』がベストセラーになった。
 蟹を獲って製品に加工する船に乗り込んだ主人公が、非人間的な過重労働を体験する物語だが、この船は工場でなく法規的には漁船なので、労働基準法に守られた労働時間を無視してもまかり通るという設定で、もちろん現実にあった話である。
 初めて読んだときに、企業というのはほっといたら、何をやらかすか分からない資本主義の恐ろしさに駆られたものの、とりあえずは過去の話だろうと高をくくっていたら、現在の若者たちが自分の職場環境と比べ、共感を受けているのだと知って、社会のことが何ものみ込めていない我が身を恥ずかしく思った。
 何をやらかすか分からない資本主義、それは今でも大きな顔をしてまかり通っているのである。本書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野晴貴/文藝春秋)を読むとそのことが嫌というほど痛感される。
 厳しい就職活動の中で翻弄される若者たちを食いものにして、人格も体も破壊されるまでこき使う悪辣な会社、それがブラック企業である。この本ではブラック企業の実態が詳細にえぐり出されていく。
 就職した人間の悲惨な身の上のみならず、社会的な害毒さえ垂れ流すこうした企業のパターンわけをたとえばみてみよう。


1選別タイプ。これにはふたつあり、
a.入社後も続く「シューカツ」。とりあえずは「使用期間」の名目で抱え、「正社員」採用を目指して過酷な労働を強要する。大量の募集をかけて、大量の離職者を生み出す。「使える」社員だけ残して、いらない社員を大量離職させるという手口だ。デメリットはすべて社員に押しつけて、企業は何も失うものがない。
b.組織的にパワハラをかける。これも、耐えられないものを「自主的退職」に追い込むことができる。

2使い捨てタイプ
a.「見なし業」という労働条件に置き、残業代を支払わない。
b.労働基準法にうたってある36条の契約を結び、長時間労働に従事させる。
c.やめさせない。退職手続きを滞らせ、人格、精神の「壊れる」まで働かせ、退職金や訴訟問題を回避するため、自主退職の形まで追い込む。

3無秩序タイプ
職場はすでに崩壊しており、意味なく上司からのパワハラがおこなわれている。

 私もライターとして、健やかな生活を営むには、なかなかむずかしい環境になってはいるが、上司からの圧力や離職させようという組織的な狙いがないだけまだましなのだとつくづく考えてしまった。

 このほか、ブラック企業に就職した若者の味わった具体的なケースが紹介され、ブラック企業が将来のある若者たちを食いつぶしている実態、またそうした企業を見分けるためのノウハウ、社会に及ぼす悪影響などを詳しく書き記している。

 一度読んでおくべき書物なのではないだろうか。

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─情報元:ダ・ヴィンチ電子ナビサイト様─