バッサバッサとモンスターを倒していくかのように、驚くべき大躍進が続いている。スマートフォン(スマホ)向けゲーム『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)を手掛けるガンホー・オンライン・エンターテイメントは、今や押しも押されもせぬスター銘柄だ。5月14日には株価は163万円を付け、時価総額は1.8兆円に達した。グリー、DeNAをとうに抜き去り、ゲーム専業最大手である任天堂も越えた。ソニーにも迫る勢いだ。その後、株価は130万円台に反落した(注:5月16日時点)が、まだ時価総額は1.5兆円ある。
株価上昇を支えているのは、パズドラの大ヒットである。5月9日に発表した2013年1~3月期(第1四半期)決算は、売上高309億円(前年同期比9.4倍)、営業利益186億円(同75倍)。そのうち、パズドラの収益が約9割を占める。
会社側は業績予想を発表していないが、証券アナリストのコンセンサスでは13年12月期の純利益は568億円にも及ぶ。130万円台の株価であってもPER(株価収益率)は20倍台だ。驚異的な成長スピードを勘案すれば、ハネ上がった株価も、実は常識的な範囲に収まっている、との見方もできる。
12年2月にサービスを開始したパズドラは、4月末には累計1300万ダウンロードを突破。国内スマホ保有者の4人に1人が遊んでいるゲームとなった。基本は無料で遊べ、スタミナ回復やガチャと呼ばれる電子くじを回すときなどに使う魔法石(1個最大85円)というアイテムの販売で稼ぐ。
この勢いはどこまで続くのか。「パズドラの勢いは少なくとも10月ごろまで持続する。いたずらに成長を追わない運営方針が、逆にゲームの寿命を長期化させている」とエース経済研究所アナリストの安田秀樹氏は分析する。
新しい成長の種もある。スマホゲームでは3月『ケリ姫』シリーズが累計500万ダウンロードを突破。今冬にはニンテンドー3DS向け『パズドラZ』を投入する。パズドラは12年11月に北米、同12月に韓国、13年4月にはカナダで配信が開始され、順調な出足を見せている。
結果的にお株を奪われているのが、モバイルゲームの分野では先行していたグリー、DeNAだ。
■スマホへの特化が奏功
グリーの13年1~3月期は4四半期連続の営業減益となり、通期では営業利益が半減する見通しだ。DeNAは2四半期連続の営業減益で、国内におけるゲーム内の仮想通貨消費はサービス開始後初めて減少した。両社とも従来型携帯電話向けで成長してきたが、スマホに適した大型ヒット作を生み出せていない。
一方ガンホーは、従来型携帯電話向けへの提供は行わず、グリー、モバゲー(DeNA)へ配信していない。スマホに特化し、スマホ普及の波にうまく乗ることができたといえる。また、ガンホーは1998年の設立以来、「パソコン上のオンラインゲームで培った、課金単価を適正に保ち顧客を定着させる、運営ノウハウがある」(森下一喜社長)。それが、グリー、モバゲー上で過熱した高額課金によって疲れたユーザーを取り込んだ面もある。
今後の焦点は、パズドラの成長が鈍化したときに、新たなヒット作が補い、会社全体の成長を維持できるかどうか。森下社長は「M&Aはせず自力で成長をしていく」とサラリと語る。当面はその一挙手一投足に注目が集まることは間違いない。
http://news.livedoor.com/article/detail/7689017/
─情報元:東洋経済オンラインサイト様─