2013年6月27日木曜日

社員が給料決める“半年俸制” ITコンサル会社の斬新な制度


口座振り込みを“習慣”として受け止めるサラリーマンは多いだろう。こんな疑問が生じないよう、給与を社員自ら決める制度を設けているのが、IT活用支援のコンサルタントを手掛ける「ChatWork Academy(チャットワークアカデミー)」(大阪市西区)だ。給与の払いすぎで会社の業績が危うくなることはないのだろうか…。
 同社の社員は半年先までの給与を自分で決めて、上司と相談して確定している。その方法とは、自分が手掛ける仕事で今後半年間、どのくらいの収益をあげるのか、その仕事にはどのくらいの経費やコストがかかるのかを計算し、半年先の経営成績(もうけ具合)を表す個人の「損益計算書」を作成する。

 そして、会社版の損益計算書に照らし合わせ、自分の仕事がどのくらい会社に貢献しているかをみて、給与を決めるのだ。いわば半年ごとに報酬を先決めする「半年俸制」で、毎月支給される。新卒採用の社員は入社13カ月目から、中途採用の場合は7カ月目から、自分で給料を決めることができる。納得がいくうえ、夢のありそうな給与制度は、なぜつくられたのだろう。
 同社は平成23年4月、IT会社出身の加藤利彦社長(32)が設立し、給与制度は当初から続けている。加藤社長は以前勤めた会社で携わった人事労務に関する業務で、評価や給与に関して社員の最大限の納得を得るには「給料を自分で決める以外にない」という考えに行き着き、この制度を実施することにした。

 その一方、半年先の成果目標を基にすることにしたのは「過去の実績で決めていたのではおもしろくない」が理由だ。この給与制度はもちろん、同社が大事にする「社員満足度」を高める狙いがあり、社員の山本達也さん(25)は「がんばればがんばるほど、成果につながることが目に見えて分かる」と好評だ。
 さらにいくつもの効果がある。給与を決める際、利益、顧客の満足度向上、コスト圧縮を考えることで、客観的に経営や組織経営が理解できる。川崎真未さん(27)は「損益計算書を振り返ると、もっと成果につながる提案ができたのではないか、といった反省が生まれる。自分の手掛ける仕事の価値がはっきり理解できる」と効果は絶大だ。

 研修も会社に命じられるまま出かけていたのでは、さっぱり意欲がわかないかもしれないが、損益計算書に研修費を計上すれば、コスト以上の研修成果を目指したくなるという。もし利益が出すぎたら自分でボーナスを出すことができる。逆に赤字がひどければ、当該月から自分で給与を減額することも。半年俸制ながら、成果主義が基本の部分は当然ある。
 しかし「組織のよいところを生かし、全員で知恵を出して、各人の赤字の転換、売り上げ向上の工夫など、知恵を出し合い、助け合っている」(加藤社長)と、チームワーク育成にもつながっているとか。実際に、加藤社長は給与を下げるように従業員に提案したことはなく、むしろ「もっと上げよう」と言っている。ただし、これはご褒美のアメではない。「もっと成長できるだろう、もっと上を目指そうという意味です」と、まさに愛のムチなのだ。

 納得が得られる給与制度は、そのままやる気が奮い立つ社風にもつながっているようだ。ちなみに、本稿の取材は川崎さんの損益計算書に計上されるという。給与にどのくらい反映されるのかを聞くと、「成果部門なので、掲載されたら分かります」。閲覧数が伸びますように…。(平岡康彦)

http://news.livedoor.com/article/detail/7793280/
─情報元:産経新聞サイト様─