2014年6月5日木曜日

ソニーから離れてソニーらしくなれるVAIO株式会社 規模の戦いに負けて初めて気づく「日本らしい経営」

「VAIO、投資ファンドに売却だってよ。うちの事業部でなくてよかったな」
 ソニーのVAIO事業が日本産業パートナーズの投資ファンドに売却されることが発表された運命の5月28日、こんな会話がソニー社内で多くやり取りされたのではないか。
 かたやソニー、かたやファンド。ある日を境にして、VAIOに携わる社員の保険証から慣れ親しんだ「ソニー」という呼称が消える。まさに、天国と地獄といったところか。
 しかし、本当にそうだろうか? 筆者は、逆の意見を持っている。
 数年後には「VAIO株式会社」こそが、井深大さんや盛田昭夫さんの志を受け継いだソニーらしい企業になっているのではないかと感じる。「VAIO株式会社」は、この7月からわずか200名程度の小集団でスタートする。自ら残りたいとハラをくくった、熱き想いを持った人たちの集団だ。
 小規模なので、ムダに規模を追い求める必要がない。本来のソニーらしい、「自分たちがつくりたいモノをつくる」ことができる。数年後には、ユニークで尖った商品を発表し、市場で独特の存在感を発揮しているだろう。ひょっとして、「和製アップル」と呼ばれているかもしれない。
 一方、5月28日の報道で「ほっと」胸をなで下ろしたソニーの残留社員は、その後も大きな変化を感じられず、ムダに時間ばかりを費やし、気が付けば「VAIO株式会社と、どちらがソニーかわからない」と揶揄されているかもしれない。

日本のモノづくりの強さはメカ的技術
徹底した「すり合わせ」が価値を生む

 「ダメか……」
 「いえ、ポイントは記憶装置です。『VAIO』は部品を高密度に重ねることで小型化と水没対策をしているので、途中で紅茶が止まっている可能性があります」
 プロは諦めていない。
 フラットケーブルのコネクターを横にずらし、マイクロスコープで基板の裏に隠れている記憶装置を確認する。
 「大丈夫ですよ。たぶん。紅茶はここまでは来ていません」
 一旦、PC内部の水分を全て飛ばし、数時間暖房器具の前で乾燥させた後に、電源を入れた。PCが起動した。一部、キーボードが死んでいたが、データに損害はなく、大事には至らなかった。
 先日、愛用の「VAIO Z」のキーボード上に紅茶をこぼした。地元のNPO法人が運営する「PCお助け隊」の手を借りて復旧させることにした。危うく、データ全損の大被害となるところであったが、日の丸製造業の底力に救われた。
 高度なすり合わせ技術の賜物だ。小型化や軽量化のみならず、水没対策にまで手が届いていた。日本の宝だ。これが、組み合わせ型の廉価版PCだったならば、厳しい結果になっていただろう。
 モジュール化を駆使してボリュームとスピードの両輪を手に入れ、日本企業を苦しめていた企業、それはご存知韓サムスンだ。このサムスンが、かつて日本企業が味わった苦境に直面している。本連載の第5回「モジュール化の自縄自縛」でも触れたが、モジュール化は進めば進むほど、似たスペック製品の製造のハードルを低下させ、新規参入障壁を下げるというジレンマを内包している。

ソニーと同じ苦境を味わい始めたサムスン
モジュール化のジレンマから抜け出すには

 このモジュール化のジレンマにより、スマホ市場が過当競争に陥っている。アップル、サムスン、そしてソニーなどの従来のプレーヤーに加え、クールパッド・グループ(酷派集団)やモトローラーを買収したレノボ、そして「中国のジョブズ」が率いる小米など、新規参入企業が激増した。
 中国では、製造台数が年間1000万台を超えるメジャープレーヤー以外に、年間10万台未満の小さなプレーヤーも含めると、600社近いスマホメーカーが存在していると言われている。ここに、量販店であるビックカメラや関西電力系の通信会社ケイ・オプティコムなど、異業種まで参入してきた。
 何とも皮肉な展開だ。モジュール化テクノロジーを活用して日本勢を追い上げてきたサムスンが、今度はそのテクノロジーを活用した他社から猛追を受け、急激にシェアを落としているのだから。まさに、モジュール化による仁義なき戦いである。
 この数十年で、モノづくりのトレンドに大きな変化が起きた。それは、エレキやソフトの比率の高まりだ。ゼロ戦の複製を見ると、まさにメカの集合体と感じる。しかし、ハイブリッドカーをはじめ昨今の車は、大きなコンピュータ、電子部品の集合体だ。
 メカ、エレキ、ソフトの複雑化の解決策として、開発現場ではインターフェースを明確にし、シンプルな組み合わせ型、すなわちモジュール化を推進する。しかしながら、それでは過去の失敗から学んでいない。モジュール化は競合の伸長も招いてしまう。しからば、モジュール化の良さを活かしながら、弊害を殺す開発手法はないだろうか。それが筆者が提示している手法だ。
...続きはこちら >>
http://diamond.jp/articles/-/54032?page=3
─情報元:ダイヤモンド・オンラインサイト様─