ワーキングマザー「データで見る育児休暇取得率」によると、育休(育児休暇・産休)制度を設ける会社は、従業員500人以上のいわゆる大企業で99.9%と、ほぼすべての会社が導入しているそうです。小規模の会社も半数以上が制定しており、もはや出産で会社を長期休暇することになんら周りの目を気にする必要はない時代になってきました。喜ばしいことだと思います。

ところが、昨年末、読売新聞の悩み相談サイト・発言小町でこんな書き込みが話題を集めました。「正社員になった途端に妊娠」と題されたこの書き込みは瞬く間にネットに拡散。好意的な意見も散見されるものの、批判的なコメントが多数寄せられ、それがさらにネット記事になる……一個人の相談にネットの住人が非難を浴びせるという、まさに異常な事態に。

相談の内容は、

「派遣社員から正社員に昇格した直後に妊娠発覚。正社員昇格の時も結婚の有無を報告しておらず、会社から厳しく窘められたばかり。今度は妊娠などとはとても言えない……。自分は非常識なのか? 辞めるべきか? ただ、本音では働きたい……。」

要約すると、そんな相談でした。

これに、「相当いい加減ですね」「周りは辞めて欲しいと思ってますよ。なんで今妊娠しちゃうの。迂闊すぎます。」と、早速、非難のコメントが寄せられたという訳です。

■相談者は本当に「非常識」「周りに迷惑をかける存在」なのか?
筆者は、このサイトで仕事とは?ということを常々書いています。基本的なスタンスは、「人として常軌を逸したこと」や「法律違反」をしなければ、どんな仕事の仕方、ゆくゆくは生き方をしても良い……と考えています。

なぜならば、同僚や仲間に迷惑をかける生き方はそれなりにデメリットもあります。しかし、気を使ってばかりが人生ではありません。美辞麗句を並べる職場の仲間や、テレビで大言壮語を多用する専門家があなたの人生を救ってくれるのか?と言えば、答えは否です。

もちろん、人に迷惑をかける生き方をすれば、それなりに制裁もあります。人に尽くす人はそれなりの施しを受ける場合もあるでしょう。しかし、自分らしさを失うまで、気を遣いすぎるのは考えものです。

そこで、今回の発言小町で一躍「非難される人」になってしまった相談者は、常軌を逸した人なのでしょうか?

筆者は、自信をもって「否」と答えたいと思います。

そもそも、職場は何のためにあるべきものでしょうか? それは、生活や自分の人生のためです。会社を成長させるために働いているという意見は間違ってはいませんし、ある側面では筆者も賛成です。しかし、それが最終目的ではありません。

チーム一丸となって仕事を頑張ること。それは、各々の生活を向上させるために行っている「手段」のひとつです。つまり、幸せな人生が送れない仕事は、もはや奴隷か、現代的な言い方をすれば単なるワーカホリックでしかないのではないでしょうか?

妊娠や結婚。それは、多くの人が人生で経験する通り道。そのチャンスに恵まれた人は、祝福されてしかるべきであって、仕事に自分の幸せを振り回される必要はないのです。加えて、結婚や妊娠は、タイミングの問題があり、いつでも思い立った時にコントロールできるものではありません。また、コントロールすべきものでもないでしょう。従って、どのようなタイミングであっても職場より、結婚や妊娠が優先されるべきです。

■では、結婚未報告、正社員直後の妊娠は許されるのか?
ところで、この相談には、2つのトピックが書かれています。それは、「正社員になるときに結婚しているという報告をしなかった」と、「正社員化直後の妊娠」。

この2つは、異なる話題です。ごっちゃにして考えてしまうと、余計に感情的な回答しかできないような気もします。