今回は、入社してからわずか1年で会社を辞めさせられた28歳の女性を紹介しよう。彼女は、筆者が出入りする出版社から仕事を請け負うデザイン事務所に勤務していた。職人の集団ではあるが、この女性は未経験であり、素人に近い。
当然、社長の了解で入社したはずなのだが、労働契約書すら交わされなかった。1年経つと、「辞めろ!」と責められた。その背後にひしめくものは、社長と出版社の部長との間で繰り広げられる、醜いエゴだった。
あなたの職場に、組織のタテマエに振り回され、会社員生活を台無しにさせられた、この女性のような人はいないだろうか。
昨日社長から突然、
年末で辞めるように言われて……
昨年11月のこと――。
「突然のことで、私も驚いているんです……」
白川有美の顔色は、青冷めていた。ふだんから色が白いが、今日は血管が見えるほどに頬や額が青白い。全身から倦怠感を漂わせる。いつもの容姿端麗な姿とは、別人のようだ。
ここは、中堅出版社(社員数200人)の1階ロビー。入口から向かって右側に受付があり、その数メートル奥に茶色いソファがある。深々と座れるはずなのだが、白川は腰をかすかに降ろしただけで、やや前のめりになり、話す。声は少し震えている。
「昨日、社長から『年末で辞めるように』言われて……。いきなりそんなことを言われても、これからどうしていいのか……」
白川は、デザイン事務所に勤務する28歳の女性だ。1年前に入社し、ウェブや雑誌などのデザインをつくる4人デザイナーたちの指示を受けて、資料を集めたり、クライアントに連絡をしたりするアシスタントである。この出版社も、クライアントの1つだ。白川は“退職の挨拶”をするために現れた。わずか1年だったが、白川の窓口となったのが、雑誌編集部の川本(29)だった。
「辞めろ、なんて……。私たちの前では、若井さんは紳士だけどね……」
同情するふりをしつつ、横に座る、同じ部署の内田の顔を見る。内田(30)は、「元気でね……」とだけ声をかける。
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─情報元:サダイヤモンド・オンラインイト様─