2013年3月4日月曜日

美輪明宏さんに聞く 「ヨイトマケ-」時代を超えて愛される名曲の理由


「かあちゃんの唄こそ 世界一」-。
 昨年おおみそかのNHK紅白歌合戦に初出場した美輪明宏さん(77)の「ヨイトマケの唄」は、お茶の間に衝撃を与え大きな話題となりました。半世紀近く前に発表されましたが、歌詞に含まれる言葉が問題視され、表舞台から姿を消していた名曲がよみがえった瞬間でした。(櫛田寿宏)

◆まとも回帰
 インターネットの掲示板に書き込まれた「ヨイトマケ-」に対する賛辞の数々。「ほめてくれるのはありがたいけど、恐縮してしまう」という美輪さんが、その一つを紹介してくれた。
 「ひとつの歌が日本国民の意識を正常化に向かわせたのは初めてのできごと」
 「ヨイトマケ-」は昭和40年にレコードが発売された。貧しい家庭の少年と、工事現場で泥まみれになって働く母親を描いた、約6分のドラマチックな歌だ。紅白以降、美輪さんのCD全集は前年の数倍の売れ行きとなっている。その理由を美輪さんは「真実、親子の情愛、無償の愛…。今、みなさんが欲しがっているものが入っているので支持されたのだと思います」と分析した。
 美輪さんは、今の日本に「まとも回帰」現象が起きているという。テレビ番組は人に暴力を振るったり恥をかかせたり。小説や映画も恐怖やスリルなどを感じさせるものが多い。「文化の作り手の側はクールやニヒルでいることがかっこいいと考えているけど、そんな考えは過去のものになった。人々は心が温まる『まとも』なものを求めているんですよ」と話す。


◆“放送禁止歌”に
 美輪さんがこの歌を作ったのは五十数年前。作った理由は「こういう歌がなかったから」。当時、シャンソンは上流階級の婦女子の優雅な趣味ととらえられていた。問題意識を持って、怒りを込めて何かを告発するために歌うシャンソン歌手もいたが、そうした歌は下品だといって受け入れられなかった。そんな状況に我慢できなかった美輪さんが渾身(こんしん)の思いを込めて発表した作品なのだ。
 テレビで「ヨイトマケ-」を歌ったところ、大きな反響を引き起こした。レコードは大ヒットしたが『土方』などの差別表現を含むと判断されて民放の「要注意歌謡曲」に指定されてしまったのだ。後に指定制度が廃止されるが、以来、“放送禁止歌”という実体のないレッテルが張られてしまった。
 平成10年に泉谷しげるさんが「ヨイトマケ-」をカバーした。それ以降、桑田佳祐さんや槇原敬之さんら数多くのアーティストが歌い、名曲として認識されるようになった。それでも、紅白歌合戦というひのき舞台で歌われるまでには、さらに多くの時間を要した。
 常に美を追求する美輪さんが、この歌の中で非常に醜い人間を演じている場面がある。主人公の「ヨイトマケの子供」を別の子供たちがいじめるところだ。「いじめる側の人間は劣等感のかたまりで、頭が悪くて、それをごまかすために暴力を振るっていじめるんです。そんな卑しい心根に気づかないでいる。そのことを教えるために、なるべく嫌な顔をして表現しています」と説明した。
 美輪さんは、「学校教育に修身の授業を復活させるべきだ」と力説する。「いじめることは、自分はバカです、劣等感のかたまりです、醜い心を持った人間です、と言いふらしているようなもの。だからやめましょうねと全国一律で教えれば、きっといじめはなくなります」。紅白での熱唱はそんな思いを込めた問題提起なのだという。

http://news.livedoor.com/article/detail/7452996/
─情報元:産経新聞サイト様─