2014年8月22日金曜日

骨粗鬆症の椎体骨折が楽に治る「経皮的後弯矯正術」

 骨粗鬆症になると、併発しやすいのが背骨がつぶれて骨折する「椎体骨折」だ。患者の大半が高齢者だけに、体への負担が少ない治療が重要になる。最近、広まりつつあるのが、2011年に保険適用になった「経皮的後弯矯正術」だ。

 椎体骨折は、「こんにちは」とおじぎをしたり、後ろの物を取ろうと振り向いたり、物を持ち上げたりといった、ごく普通に行う日常的な動作が引き金になることが珍しくない。米国では45秒に1件の割合で、椎体骨折が起こっているという。

 症状は体を動かす時に生じる背中や腰の痛み。重症化すると、激痛で動けなくなる。骨がつぶれた状態で固まってしまい、背筋が前傾姿勢になり、転倒や逆流性食道炎などのリスクも高まる。

「治療はまず、コルセットで腰を固定し、痛み止めの薬などを服用する保存療法です。しかし、数週間経っても改善が見られず、むしろ悪化する患者さんがいます。保存療法を長くすることで認知症や体の機能の低下が著しく進む可能性のある患者さんもいます。そもそも認知症が強ければ保存療法が難しいことも。そういう場合、検討されるのが外科的治療の経皮的後弯矯正術(バルーンカイフォプラスティー)です」(苑田第三病院東京脊椎脊髄病センター・星野雅洋センター長)

 経皮的後弯矯正術は、「椎体形成術」という治療法のひとつ。つぶれて骨折したところに“何らかのもの”を入れて、骨を固定化させる方法だ。“何らかのもの”には、リン酸カルシウムや自家骨などがあった。経皮的後弯矯正術では、骨セメントを使う。

「骨セメントを用いた椎体形成術はこれまでにもありましたが、認可されていませんでした。骨セメントを骨折したところに入れる時、圧をかけるのですが、折れた骨の間から骨セメントが漏れて血管の中にセメントが混じり、肺まで運ばれて肺塞栓症という命に関わる合併症や脊髄の通り道にセメントが漏れ出す等の合併症を起こすリスクがあったからです」

■痛みで歩けなかった人が治療後歩いて帰ることも

 ところが今回、バルーン(風船)を用いた治療法が開発された。背中に5ミリの穴を2カ所開け、そこから特殊な器具を使ってバルーンを骨折箇所に入れる。バルーンを膨らませることで、つぶれた背骨が元の立体的な形に戻り、さらに空間ができる。そこに骨セメントを入れるので圧をかけずに済み、合併症のリスクが低くなる。

「バルーンによって肺塞栓症のリスクは従来の方法よりかなり減りました。致死的な合併症を減らせた意味は大きく、保険適用につながったのです」

 骨セメントの最大のメリットは、すぐに固まることだ。つまり椎体骨折の痛みがすぐに治まる。全身麻酔で手術は行われるが、術後、麻酔が覚めた頃には、骨セメントは固まっている。痛みで歩けなかった患者が、退院時には歩いて帰れる。

 外科的治療なので入院は必要であるものの、大きく背中を切るわけではないので体への負担は小さい。手術前日に入院し、術後は1~2日様子を見るので、2泊3日あるいは3泊4日で行われる。

「肺塞栓症に加えて、合併症としては、骨セメントを入れた部分と、そうでない部分の骨の硬さが違うことで起こる『隣接骨折』があります。しかし、十分な管理下で治療が行われるので、隣接骨折に迅速に対応でき、大事にはなりません」

 経皮的後弯矯正術は施設と医師どちらも認定を受けたところでしか行われていないが、2013年1月時点で300施設強にまで上っている。適応は、「保存療法で痛みが改善しない場合」となる。

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─情報元:日刊ゲンダイサイト様─