2015年3月25日水曜日

「空き家を持っていると損」 法改正で実際に煽りを受けた人の悲劇

■空き家を持っていると大損する

国が住宅政策を新築重視から中古住宅の充実へ向けて、大きく舵を切ったのをご存知だろうか。
端的な例が、2月26日、一部が施行された「空き家対策特別措置法」である。
この法律の柱は二つ。
ひとつは、放置された空き家に対し、指導、勧告、命令を経て、それでも従わない場合は、強制撤去できるようにしたこと。

もうひとつは、放置されて危険な状態となった空き家に対しては税制面での優遇措置がなくなったこと。住宅地用特例が適用されなくなるために、固定資産税は6倍に跳ね上がる。
こうした住宅政策の変化や法改正は、一般にはほとんど知られていない。
『週刊現代』(2月28日号)は、「知らぬ間に法改正されていた。『空き家』を持っていると大損する」と題して特集。そのなかで紹介された佐野義之さん(67歳・仮名)のケースは身につまされる。
千葉の実家を相続したが、東京で居住しており帰る予定はなく10年以上放置。年間6万円の固定資産税が6倍になるというので売却先を探したが、100坪の間取りの家についた値段がなんと8万円。さらに更地が条件なので、解体して整理する費用が350万円。放置していれば固定資産税は36万円。二進も三進もいかない――。
少子高齢化に伴う人口減少時代に入り、空き家問題が浮上するのは当然のように思われるが、日本の特異性は、「新築住宅の使い捨て文化」のなかで、空き家率は戦後一貫して上昇してきたことだ。
国内の総住宅戸数6063万戸のうち、空き家は820万戸で13.5%に上る。これは世界のなかで異例の数字。ドイツでは1%、イギリスで3%、国土の広大な米国でさえ10%である。
その「文化」は新築好きな日本人の習性から発しているが、そう“仕向けた”のは国だ。

■地方が先に「中古」へシフト

更地に住居を建築すれば固定資産税が6分の1になるという前述の「住宅地用特例」はそのうちのひとつだし、住宅ローン減税制度も大きい。
新築住宅取得者の借入金の金利負担を軽減する制度は、住宅取得の動機となるし、金融機関にとっても家主に一生分の借金を背負わせることの出来る有難い制度だ。
さらに新築住宅使い捨ての根本原因とみられるのが、木造住宅の耐用年数を22年と定めた財務省令だ。
耐用年数と使用限度は同じではないが、22年という数字がひとり歩きし、木造住宅は約20年で資産価値がなくなると査定する業界慣習に繋がっている。
空き家率の増加は、どこかの時点で新築から中古住宅へと政策転換しなければ防げなかった。
国より先にシフトしたのは地方である。
全国の自治体が、空き家の近隣住民からの苦情を受ける形で、老朽住宅の持ち主に適正な管理を求める条例を相次いで制定。その数は401自治体に達していた。
その流れに乗る形で、昨年4月、自民党の空き家対策推進議員連盟(宮路和明会長)が議員立法で「空き家対策特別措置法」を党の国土交通・総務合同部会に示して了承され、基本方針が固まった。
今後は、中古住宅の充実と流通促進が政策課題となる。
国交省は、「中古住宅流通・リフォーム促進等の住宅市場活性化」を打ち出しており、「2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場を20兆円まで倍増させることを目指す」としている。
そのための費用も予算化、「つくっては壊す」から「ストックをきちんと手入れして長く大切に使う」社会への転換を図るため、長期優良住宅を推進事業とすることを決めた。
また中古住宅の活用のための市場環境整備を図るため、「流通支援」「金融機関との連携」「流通市場の動向把握」「戸建賃貸市場の活性化」などを予算化した。

■国交省役人の有力な天下り先

舵が切られ、新たな法律の枠組みのなかで中古を軸とした住宅事業を推進させる以上、新築市場とは別の族議員が誕生、それと業界が結びつき、仲介を果たす官僚OBなどが「中古住宅マフィア」を形成する。
また、中古住宅流通・リフォーム市場が20兆円に倍増するというのだから、これまでのリフォーム市場は業態を変えて発展、新たな「リフォーム利権」が誕生しよう。
政策の大転換に伴い、新たな利権構造が生まれるのは宿命である。また、利権を先取りしようという動きが、競争となって変化を促進する側面もある。
ただ、政治家や官僚が、新市場を“食い物”にする危険性があり、監視の目は必要だ。
例えば、中古住宅を購入する際、「瑕疵保険」というものがある。リフォーム時の検査と保証をセットにしたもので、国交省指定の住宅瑕疵担保責任法人が取り扱う。各法人は、今後、国交省OBの有力な天下り先となっていくだろう。
国交省担当記者が言う。
「制度や法律に強い政治家や官僚が、まず優位なポジションを得るのは避けられません。それが、今、中古住宅やリフォーム業界で起きていることです。その行き過ぎは正すべき。最初が肝心ですからね」
これまで、あまり知られていなかった「住の世界」で起きている変化に、目を凝らす必要がありそうだ。


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─情報元:現代ビジネスサイト様─