以前、睡眠薬と言えば、薬物依存、中枢性の呼吸抑制を起こすなど「怖い」イメージが付きまとっていました。しかし、現在の睡眠薬は大変安全性が高く、副作用を極力、抑えられるようになりました。そのため、専門医以外の医師も気軽に処方するようになりました。
そういった背景の中で、睡眠薬の新しい薬も増え、処方量も大きく伸びていきました。ところが、昔の睡眠薬の負のイメージが未だにつきまとっていて、毎日飲むようにと言われていても、恐れて、頓服として飲み、結果、不眠症、うつ症状が一向に治らないと不満を訴える人が増えています。
時代の流れと共に睡眠薬に対する考え方も随分変わりました。最近の睡眠薬の飲み方についてお話してみようと思います。
自分で勝手に睡眠薬を止めると、不眠がさらに悪化します
睡眠剤に不安を感じている人は、眠れても眠れなくても睡眠薬を飲まなくなる傾向があります。しかし、例えば、3日程度飲んだだけで、すぐに飲むのを止めた場合、反跳性不眠といった副作用が出て、不眠は進行し、益々、睡眠薬への不信感が増していきます。
睡眠薬に対しての不安が強く、代わりにアルコールで眠ろうとする患者もいますが、アルコールも中途覚醒の原因になります。
睡眠薬を飲み始めたら、一生止められない?
そう感じる人が大変多いことは事実です。たしかに依存を発生しやすいし、副作用も全くないわけではありません。ただ、医師は不眠が改善されたら、薬を依存なく、中止させていく方法をわかっているので、医師の指示通りに行えば、薬は間違いなく、止めることができます。
睡眠薬を中止する方法
主に2種類あって、1つは2週から4週おきに症状を見ながら徐々に減らしてやめていく方法で、作用時間が短い薬の場合などに用います。二つ目は休薬期間を徐々に伸ばしていき、最終的には止めるという方法で、作用時間が長い薬に用います。
場合によってはこの二つの方法を組み合わせることもあります。又、作用時間が短い睡眠薬の場合は、血中濃度が急激に下がり、反跳性不眠等が出易くなります。その時は、作用時間が長い睡眠薬に変えてから休薬します。
睡眠薬を飲むと認知症になりやすい?
患者がそう考えてしまう原因として、前向性健忘(睡眠薬を飲んでから寝つくまでのことを忘れてしまうこと)のような症状が出た時に考えるようです。しかし、これらの副作用は睡眠薬を飲んだ後、すぐに床に就かず、無理に起きていたり、アルコールと睡眠薬を同時に飲んでいたことで発生します。
アルコールとの併用を禁止し、睡眠剤を飲んだ後はすぐに就寝するようにすることでそういった不安は回避できます。
医師が睡眠薬を処方する時の工夫
朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒型の睡眠障害は、今までは朝早く目が覚めないようにと長時間作用型の睡眠薬を処方するのが一般的でした。しかし、現在は、翌日にも薬が残るので、転倒しやすい高齢者には出しにくいと考える医師が増えました。
そのため、筋弛緩作用が弱い超短時間作用型の睡眠薬(マイスリーなど)を処方して、まず様子を見てからというようになりました。又、転倒の心配がない若年層でも、最初から抗不安作用が強い睡眠薬から処方すると、効果が無かった時に次に出す薬の選択が狭まれる危険性が出てきます。
その上、患者が勝手に休薬すれば、かえって副作用が出易くなってしまうことを考慮し、やはり長時間作用型ではなく、抗不安作用や筋弛緩作用が少ない薬を選択することが多いようです。
個々の患者に相性がいい薬を探る
例えば、長時間作用型の睡眠薬を処方するのが一般的だとしても、患者が日中働く社会人だった場合を考えてみます。長時間作用型はすぐに効果が出にくく、日中に薬剤の血中濃度が高くなって効きはじめることもあります。これでは仕事に悪影響が出てしまいます。
このような場合、早朝覚醒型の睡眠障害は長時間作用型の睡眠薬の処方が原則でも、最初は効果が出易い作用時間の短い薬を出して、様子を見ながら徐々に薬を変えていくといった工夫がされます。
不眠の原因が、全て不眠症とは限りません
入眠障害を訴える患者の中に就寝時に足がピクピクと動く、火照りを感じて不眠となるむずむず脚症候群の患者が隠れていることがあります。又、途中で目が覚める患者の中に、睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合もあります。
このような疾患に睡眠薬を処方しても、一向に症状が緩和されるだけでなく、増悪の原因になることも。睡眠薬を飲んでも眠れないと訴える患者の中には先述した疾患が悪影響を及ぼしていることがあります。
─情報元:健康生活サイト様─