中小企業においては、デザイナーが必要になるような商品開発プロジェクトが常にあるわけではなく、新しいことを始めたいけれどデザインについて相談できる人がいないという状況がほとんどだと思います。
そのような段階で、デザイナーと付き合い始める意味はあるのでしょうか。
デザイナーは主治医
生活習慣病が注目され、病気を未然に予防する健康のリスクマネージメントが徐々に浸透しています。そして、そのためには地元の町医者に主治医になってもらうのが良いと言われています。気になることがあれば気軽に行ける、地元の町医者です。
デザイナーを医者に例えるのは気が引けますが、フリーのデザイナーは仕事柄、多くの企業と付き合い、様々な商品開発の現場に立ち会っています。そういう意味で、様々な症状の患者に接する町医者に近い立場にいると思います。
普段はつかず離れずの関係でいいと思います。患者と町医者のような信頼関係が、これからの中小企業とフリーのデザイナーの付き合い方なのだと考えています。
月1回、2時間程度のデザイン会議
付き合ってみたいデザイナーが見つかったら、信頼関係構築のためにも、まずは月1回2時間程度のデザイン会議をする、簡単なコンサルタント契約から始めてはいかがでしょう。金額は月額数万円程度でしょう。税理士や弁護士との顧問契約のようなイメージです。テーマもなく費用をかけて、デザインコンサルタントを雇う意味があるのかと思われるかもしれません。意外と必要ないかもしれません。その場合は契約を解約すればよいのです。
デザイン会議は、日々発生するちょっとした業務について、デザインの相談をするような会議です。日常業務の中で何かとデザインを求められる場面があるはずです。ユーザーから商品デザインが「あか抜けない」と言われているかもしれません。自社サイトなど、広告宣伝の面でデザインが必要とされているかもしれません。営業が伝票類をすっきりさせたいと考えているかもしれません。総務が看板のリニューアルを検討しているかもしれません。
日々の業務の中で、どこでデザインが必要か具体的に分かれば、デザイナーの活用の仕方が分かります。予算も見えてきます。
とりあえず付き合ってみよう
商品はユーザーにとってメーカーの顔ですから、商品デザインに力を入れることは当然です。しかしそれだけでなく、日常業務の中にデザインを取り入れることは、ユーザーだけでなく、社内の意識改革や業界内での企業イメージの向上につながる場合があります。
月数万円のコンサルタント契約で、何でもうまくいくことはないでしょう。でも、少しはうまくいくかもしれません。もし、デザインの必要性を感じたのなら、とりあえず月1回のデザイン会議から始めることをお勧めします。
そして、常にデザイナーとお互いを気に掛けるような信頼関係が構築できたなら、末永い付き合いを前提に、従業員を一人雇うような気持ちと予算で、デザイナーと付き合っていただきたいと思います。
最後に、デザイナーとの付き合いによって得られる二つの利点をお伝えします。それは、デザイナーの「見える化」能力と、ノウハウの蓄積です。
付き合う利点(1)デザイナーの「見える化」能力
工業デザイナーの仕事の大半は、コンセプトを基にスケッチを描いたり、手作りの試作を作って「見える化」することです。企画段階の概念的な言葉のやり取りも大切ですが、予算や期間が限られた商品開発では、なるべく早く商品の形状や仕様を決める必要があります。それには、商品を「見える化」するのがもっとも効果的です。
商品開発に慣れない中小企業では、関係者の思惑ばかりが先行し、どこから手をつけていいか分からず、いつの間にか開発が頓挫してしまう場合があります。そのようなとき、スケッチや試作で最終イメージを具体的に「見える化」できるデザイナーがいれば、開発の頓挫や遅延というリスクを回避することができます。
スケッチや試作だけでなく、関係者の意識がばらばらでトラブルが起きやすくなる開発初期の段階に、ユーザー像や使用環境を分かりやすく「見える化」することで、関係者の意識を統一することもできます。
付き合う利点(2)実務ノウハウの蓄積
もう一つの利点は、デザイナーのノウハウの蓄積です。フリーのデザイナーはいろいろな業種との付き合いの中で、商品開発に関連する様々な実務ノウハウを獲得しています。例えば筆者もデザイナーとしてかかわりながら、クライアント企業に製造や販売のパートナーとのマッチングについて提案させていただくことがあります。
中小企業では、実務ノウハウを個人に負っている場合が多く、その社員が辞めてしまえば、彼が持っていたノウハウは企業に残りません。それに対してフリーのデザイナーは、いつでも契約解除・再契約が可能ですし、契約期間中はデザイナーのノウハウを享受できます。雇用が流動化した昨今、商品開発の実務ノウハウという面でも、デザイナーと付き合うメリットは大きいと思います。
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http://www.nikkeibp.co.jp/atclcsm/15/408015/042200025/
─情報元:小さな組織の未来学サイト様─